そこそこ面白い仕事で安定した収入を得、そのお金で一番好きなことに情熱を注ぐ。
ズバリ、仕事に求めるのは面白さと収入と、趣味に支障が出ない範囲の労働時間とタスク量。
....なーんて、この仕事に全力をかけている人達に怒られるだろうか。
でもごめんなさい、やっぱり、私の本命は舞台なんです。

小さい時から舞台に立つのが生き甲斐の私。舞台以上に情熱を注げるものはない

小さい時から舞台に立つのが生き甲斐だ。
俳優になる道も何度も憧れ考えたが、実家を出て自立することを優先した。というのも、私はかなりの"いい子ちゃん"で、24歳になっても物事の判断において「親を喜ばせるかどうか」を気にしていることを、まずいと感じていたからだ。俳優を諦めたのも、親の顔色を伺った結果といえる。色んな意味で"自立"するため、とにかく実家を出たかった。

思えば、幼稚園の頃からバレエの発表会や部活・サークルの公演など、日常生活の中には絶えず「舞台の本番」があったし、舞台以上に自分が情熱を注げるものはなかった。公演を滞りなく行うためなら勉学やバイトにも真面目に打ち込んだ。就職後も、観劇や練習時間の確保のため、徹底的な効率主義で日々定時退社を目指していた。「あいつは仕事が早い」と評価されたが、根底にあるのは趣味への情熱だ。

そんな風に趣味と仕事を両立し、まあまあ好調な人生だったが2020年2月に例の出来事があった。もはや“生きがい”ともなっていた、社会人ミュージカルの公演を終えた翌週から、ウイルスは爆発的に広まった。思えばあの公演も、あと1週間小屋入りが遅ければ中止だっただろう。

それからは、舞台を職業にする人たちですら公演が打てない状況が続いた。
まして、アマチュアである私は、毎日黙々とテレワークで本職に向き合うしかなかった。私の仕事は広告系。世の中で物が売れるよう、情報を広めるのが仕事だ。もちろん広告費はこういった緊急事態では真っ先に削られるため、コロナの打撃は大きく受けたが、仕事はなくならず、給与もしっかり支払われた。

「会社員になるルートを選んで正解だったな。」果たしてそれは本音だろうか

今は我慢。プロですらできないんだから我慢。

けれど、一年弱が過ぎても夜明けは見えない。
そして、経済的に苦境に立たされる舞台関係者の方々を横目に、とうとうこう思ってしまったのだ。
「こんなことになるなら、やっぱり会社員になるルートを選んで正解だったな。」
安定した収入に加え、在宅勤務だから感染リスクも低い。今の自分は本当に"守られて"いる。これでよかったんだ、と。

けど、果たしてそれは本音だろうか。この考えの中には、不安定な道を覚悟しながらも舞台を愛し、活躍する役者たちに対して、一種の妬み僻みがなかっただろうか?会社員を選んだというコンプレックスを隠すため、コロナを言い訳にしているのでは?
それに、趣味の範囲である以上、コロナが、集客して収束しない中、自主的に公演をうつのはどうなのか。もう二度と舞台に立つ機会はないかもしれない。“本番”のない生ぬるい日常が何年も続いて、年々自分は歳老いていく。それを思うと、ゾッとした。

大好きな舞台に立ち続けるため、私は働く

天変地異が起きた今こそ、仕事と舞台の両立について考え直す時なのかもしれない。

広告業はチームプレイなうえ、自分たちの給与はクライアントからの信頼ありきだ。期待に応えるため企画を出し、会議を重ね、夜な夜な調整に追われながら形にする。残業もある。かなり熱量が必要な仕事で、周りの人々は皆、仕事を生活の中心に据えている。こんな環境で、「私の本命はやっぱり舞台なんです。」なんて、迷惑な話だと思う。

趣味を優先しながら、やりがいもお金も欲しい。
全部欲しいなんて虫が良すぎる話だろうが、どれも譲れない。それに会社員生活にも、演技や表現の糧となることは沢山ある。(相手を口説く営業トークを即興で考え、実践しているとき私はまさに俳優だ。一番集中力を発揮している瞬間だ。)
私が今できることは、会社員を続けながら演劇のできる拠点を探し、一つずつその門戸を叩くこと。また、新たな勤め先や働き方についても検討し始めることだろう。

役者を本業にした人を妬み、僻みながら働くなんて不健康がすぎるから。
「私が働く理由」は、矛盾しているようだけど、大好きな舞台に立ち続けるためだ。