26には結婚をし、子どももいてさっさと実家を出て幸せになってやるなどと妄想していた女子校出身の私も、いつの間にか29歳になっており、クリアしているのは実家から出たことだけである。
もしかしたらこの妄想は「あるある」というものかもしれない。
話した瞬間「私はこの人と結婚する」と感じたけど…
大学時代、自由を手にした私は、グループに縛られない「ひとり」の素晴らしさを知った。一人でご飯を食べるのはもちろん、ライブや映画館、美術館も一人で行く。旅行も飛行機に乗って一人で行ける。テーマパークへ行って一人でアトラクションも余裕。誰かを誘って何かをするよりも、一人でいるほうが人の顔色を見ずに行動ができて楽だからだ。
そんな私にもまさに26歳なりたての頃、久しぶりに好きな人ができた。なぜか、その人と話した瞬間「私はこの人と結婚する」とピシャーンと電撃が走った。「それから1ヶ月で結婚しました」なんて、よくある話だ。
しかし、そのよくある話に乗っかることができなかった。連絡が途切れたのだ。フラれてもいない。ただただどうしたらいいか分からなくなった。大好きなヒトカラ(ひとりカラオケ)に行っても、途中で気持ち悪くなって歌えなくなった。
ランチ帰りの道端で突然吐いた。連絡が来ないのをわかっているのに、長文で話したいなどと送りつけた。
占いも行って、またその方と会える日が来るか確認してもらい、挙げ句の果てには神社に行ってもう一度やり直させてほしいなど神頼み。
付き合ってもいないのに縋り付く、幼稚で気持ちの悪い恋愛だった。
結婚ならいつでもできんじゃ!すぐ離婚していいならな!
今考えたら20代も後半で暴走する私はメンヘラなんて笑われるだろうが、当時はその人とどうにか結婚しようと必死だった。
恋愛の痛みは恋愛しか乗り越えられない!と思い、私は婚活に目覚めた。(恋愛と結婚は違うよ、というコメントはいらない)
街コン、婚活パーティー、知人の紹介、マッチングアプリ。男性経験の少ない私は、この数年でたくさんの男性のサンプリングを集めることとなる。そして気づく。
私が好きになるタイプの男性は、こぞって私のようなタイプを求めない。面白いくらいに、全然興味の湧かない人からは好かれる。
だんだん、私の婚活はメンタル強化トレーニングと化していった。相手にも自分にもムカついたことが何度もあった。「もしかしたら好きになるかもしれない」などと言い聞かせ、一生懸命対応する。
一人でいた方が楽しい、と思うことも多々あった。いや、それしかなかった。何故それなのに婚活しているのか、もはや意地のようなもんだった。こちらの頑張りも露知らず、親からの結婚マダ?圧力が、日に日に増えていく。
極論、結婚ならいつでもできんじゃ!すぐ離婚していいならな!
結局、私自身が結婚に囚われているんだよなあ
……そうだ。
数年前、美輪明宏さんが「幸せは健康であること」だとテレビで仰っていたことがスッとよぎった。
結婚はなんのためにするんだ。心の健康のためだ。相手といて、私の心が健康じゃないなら、それはもうだめだ。全然幸せじゃない。
私は私の心の健康が保てる人と出会ったら結婚すべきだ。
心が穏やかになり、目的になってしまっていた結婚を忘れることにした。
せっかく頑張っていたことをやめるのは勿体ないので、細々とマッチングアプリだけ続けて、出会ったのが今の彼氏。面白いくらいに一人でいるときに感じる不安が払拭され、今までの人生で感じたことのない、心の健康を実感している。
これは間違いなく結婚だ。そう思う。
……結局、私自身が結婚に囚われているんだよなあ。