「東京オリンピックまでに結婚したい」
大学4年生の時に東京オリンピックの開催が決まってから事あるごとに口にしてきた。神社に行く度にお願いした。
東京オリンピックの年、私は28歳。28歳までに結婚して20代のうちに1人子供を産む。ちょうどいいと思った。

母の為にも結婚式をやることに決めた

2019年12月。私の家でクリスマスのご飯を食べた後、プロポーズされた。高級レストランで求婚されるよりよっぽど私の理想通りだった。2020年の秋頃に入籍することを決めた。「東京オリンピックまでに」とはいかなかったけれど、概ね目標通りだった。

2020年2月。両親に彼を紹介した。そういえば昔、「結婚の挨拶に行った時、おじいちゃんも『娘はやらん!』て言ったの?」と母に聞いたことがあったけ。ドラマの影響で結婚の挨拶=反対されるものと思っていた時期もあったけど、実際は終始和やかに進んだ。
「娘の結婚式でブーケを作ることが夢だ」
フラワーアレンジメントのインストラクターをしていて、これまでも何度かウェディングブーケを作ったことがある母はそう言った。特に憧れもないし、結婚式はやらなくてもいいかな。そう思っていたけれど、母の為にもやることに決めた。

式場が決まると同時にコロナ禍に突入。結婚式は延期に

2020年3月。結婚式場を決めた。彼と私、どちらも妥協していない、2人の希望に適った会場だ。もちろん、母が作ったブーケを持ち込むこともできる。
それからだった。東京オリンピックの延期決定、外出自粛要請、緊急事態宣言の発令。結婚式の中止や延期の話も聞こえてきた。

「結婚式なんてお金の無駄なんだからやる必要ない」「本人の自己満足だ」
「高いお金を払って休日を潰される身にもなってみろ」
コロナ禍での結婚式実施を迷うカップルを紹介するインターネット記事にはこの時期の結婚式に関する意見のみならず、結婚式反対派の人々のコメントが並んだ。
「名前もわからない人が発したインターネット上の声を気にする必要なんてない」「世間にどう思われるか……」正反対の考えが頭の中を行ったり来たり。たくさんたくさん考えて、いっぱいいっぱい話し合って、入籍に合わせて実施予定だった結婚式を延期することにした。2021年5月。その頃には事態が収束していることを祈って。

楽しみにしてくれている人のために結婚式を

2020年11月。私たちは予定通り結婚した。結婚生活は楽しい。この人と結婚して本当によかったと心の底から思っている。
だけど、書類を提出しただけで、何だかぬるっと結婚生活が始まってしまったなと思う。何もかも思い描いていた通りにならなかった。
海外旅行大好きな私たちが付き合っている時から考えていた南米への新婚旅行も、私の地元で撮影する予定だった結婚写真も。きっと何十年経っても強い思い出として残るだろう。

今日は2021年1月11日。成人の日だ。
新型コロナウイルスの感染者が、昨年末からこれまでにない程に増加し、1都3県には2度目の緊急事態宣言が出された。成人式も各地で中止されたらしい。
成人式も結婚式も、更に言えば卒業式も入学式も誕生日のお祝いだって生きていく上で絶対に必要かと言われれば、そんなことはない。
何より命あってこそのことだ。決して自己満足でもなく、ご祝儀を頂くためでもない。楽しみにしてくれている人がいるから。ここまで育ててくれた両親に花嫁姿を見せるため、そして、「この人と夫婦として生きていくんだ」そう感じられる日として結婚式を行えるよう、私たちは準備を始めている。