子供相手の仕事をしていると、「おめでとう」の数に羨ましくなる。
入学おめでとう
進級おめでとう
合格おめでとう
卒業おめでとう
私たちの結婚は、いつになったら「おめでとう」がもらえるのだろう。
実は私も…が言えないこの状況
高校を卒業して今年で10年目になる。
2018年の「あけおめ」メッセージ以降、全く動きのなかった部活動同期のLINEグループに突然の投稿があったのは2021年正月。
「久しぶり!今日誕生日プロポーズされたの。結婚式、未定だけれどみんなには来て欲しいな」
「おめでとう!」の嵐に続く、元部長の「実は私も…」既婚告白。「きゃー!」「やっぱ部長が一番乗りか~」スタンプ爆弾は永遠に続く。
「高校時代の友達、結婚するんだってー」。些細な日常の一コマのようにパートナーに話しかけたつもりだったが、声が震えてしまった。
私も、私だって、、結婚しているけれど、「私も」のその一言が「書き込めない」。ただ「素敵だね」「お幸せに」が流れる画面をしばらく見守る他はなかった。
私たちの選択は事実婚だ。
理由は一つ、「お互いの名前で生きて死にたい」から。
現在の婚姻制度では夫婦どちらかの苗字を選ばなくてはならない。選択的夫婦別姓は議論され続けて24年、今年には最高裁が再びの判決を下す可能性が出てきた。だが、「確かな約束」なんてどこにもない。
無邪気な子供たちが指輪を指して「せんせー結婚しているの?」と言えば、私の世界は一瞬凍りつく。
口を開け、冷えた空気で心を鎮め、そっと吐く息に合わせて答える。
「これはね、『お守り』なんだよ」。
「あ!彼氏かぁ、良いねぇ」と勝手にニヤニヤ解釈してくれるから気が楽だが、私の願いはただ一つ。
君たちが、大人になって、大好きな人と結ばれる頃の世界は自由でありますように。
私たちの「期限」は決まっていないから…
祈るような気持ちで生きる毎日だ。
苗字が問題で祝福されないって…
私が交際相手に求めていた条件の一つが、妻氏に改姓してくれることだ。
今のパートナーは付き合い初めの頃から「苗字を変えても良いかも」と話していたため、私と相性が良いと勝手に思い込んでいた。
プロポーズにyesと喜んだ。
だが、パートナーの両親には喜ばれなかった。
「長男は苗字を継ぐ」のが普通だろう?
うるさい うるさい こわい こわい
もちろんパートナーの両親を憎んでいる訳ではない。許されざるは、それが「普通」と植え付ける社会だ。
私は苗字を変えたくない。彼にも自由に選択してほしい。
「こんなこと」で祝福されない人生って何だっけ?
職場の同僚男性も婚約者がいるとしながら、なかなか結婚報告をする気配がなかった。飲み会もない2020年。浮ついた話題も「自粛ムード」で。
密かに「別姓待ち仲間かも」と勝手に心の拠り所にして半年。
彼はある日指輪を着けた。「私事」に頬を赤らめ報告した。
彼の選択は国際結婚、コロナ禍で手続きに時間がかかっていただけらしい。
ああ、国際結婚は良い。そりゃ手続きは膨大だけれど、そのままの名前で二人を認めてもらえるのだから。思い返せば私の周りは国際結婚ばかり。選択的夫婦別姓の話題なんて一緒に考えてくれる人、いなかったな。
約束された期限を。結婚にも様々な形を
子供たちには約束された「期限」がある。
3年や6年経てば必ず卒業式があり、「おめでとう」が待っている。
子供は永遠の夏休みに憧れるが、期限があるから決められることも沢山ある。期限のその先、進路を一緒に考えていく時間はいつもワクワクでいっぱいだ。
もし、選択的夫婦別姓もあと◯年後にcoming soon!とでも決まったら、どれほど気持ちが楽になることか。
結婚には期限がない。そもそも、結婚してもしなくても良い時代に突入している。
でも、私が知らないだけで、身体には期限があるのだろう。子供が欲しいかどうかは相談中だが、5年も10年も待てる訳がない。
ひとりでも、ふたりでも生きやすい。
そんな世界が欲しいだけ。
早く、はやく「期限」を下さい。
左手に光る「お守り」を、今日も右手で包み込む。