私の両親は不仲だ。別居と同居を繰り返し、子どもが巣立った後は完全な別居生活を送っている。
日々喧嘩が絶えない両親を見て育った私は、結婚願望がまるでなかった。結婚は人生の墓場とよく言うが、その通りだと思っていた。幼少期から結婚によって生じる苦しさを見続けた私は、結婚に対してとても現実的な人間になった。
将来の結婚相手や理想の結婚式について、楽しそうに盛り上がる友人たちの中、同じようにキャピキャピできない自分がいた。
「結婚相手を間違えたら大変なことになる」という気持ちが強いからこそ、ノリや軽い気持ちで結婚のことを話す昔の恋人に、結婚への不安をつらつらと述べ、悲しませたこともあった。
ネガティブな本音を隠して平和を作りあげる恋愛を繰り返す
恋愛をしていて1番私が躓いたことは、「本音が言えないこと」である。緊張感のある家で過ごしてきたことで、親の顔色を伺い、わがままを言うことがなかった。自分の強い主張をする経験が少ないまま育った私は、特にネガティブな本音を人に伝えることが苦手になっていた。
常に家の空気を察知していた経験から、人の気持ちを察して動くことが得意であった私は、恋人ができるとある程度長続きする。相手の気持ちを汲み取り、相手を喜ばせることを考え、ネガディブな本音はぶつけず、とにかく2人の関係が平和であることを最優先してきたからだ。しかし、相手への不満や本音を伝えずに過ごしていると、その気持ちは蓄積していく。そして、いつか抱えきれず爆発してしまうのだ。我慢し続け、爆発して別れを告げる。そんな恋愛を繰り返していた。結婚しても自分の本音を隠し、我慢して、いつか爆発する自分の未来が想像できてしまい、結婚に対して前向きになれたことはなかった。
耳を傾けてくれる人がいる。安心して本音を話してみたら
長年付き合った恋人と別れた数ヶ月後に出会ったのが、今のパートナーである彼だった。初めて会ったにも関わらず、この人とこのままずっと話していたいという不思議な感情を抱いたのを覚えている。その後、お付き合いすることになったが、付き合う中では当然不満の1つや2つでてくる。今まで通り、伝えずに胸の中に留めようとも思ったが、彼は私がもやもやを抱えていることにすぐ気づく人だった。
相手に不満やネガティブなことを伝えた経験が少ない私は、伝えることが本当に苦手で、とてつもない時間がかかってしまうこともあった。しかし、彼は、私が自分の気持ちを伝えきれるまで耳を傾けてくれていた。
それからというもの、私は本音を伝える経験を少しずつ積んでいった。下手でも、時間がかかっても最後まで伝えよう。そう思えるようになったのは、耳を傾け続けてくれていた彼のおかげである。今では、不満を感じた瞬間に、笑いを交えて伝えることができるくらいになった。
昔の恋愛を振り返ると、私はずっと自分が被害者であるように思っていたのだと思う。不満を伝えず、我慢して苦しい日々を過ごしているのは、自分が選んだことであるのにも関わらず、不満を生み出す、不満を伝えづらい恋人が悪いかのように思っていた。心を閉じて、向き合うこと、ぶつかることに怯えていたのは私であった。
結婚に対してのネガティブ面を知っているのは逆に強み
今までの人生の中で、家庭環境によって生きづらさを感じることは沢山あった。しかし、大人になった今、不安定な家庭環境の中で育った自分を引きずるのも、断ち切るのも自分次第なのだと思っている。
結婚に関する怖さや不安は、今でも残っている。結婚によって苦しむ親を見てきた強烈な記憶があるからだ。しかし、彼とこの先も穏やかに楽しく生きていきたいという気持ちも、私の心に強く存在している。
今では、幼少期から身を持って感じてきた結婚の苦しさや大変さを、結婚前に知っているということは、自分の強みであるとも思えるようになった。
結婚という選択をした時、両親と同じことにはならないだろうか、そんな不安感を私はきっと持ち続ける。しかし、その不安感があるからこそ、現状をしっかり見つめて、2人の問題を少しでも解決させようと努力していくのだと思う。
大切なパートナーと穏やかに楽しく生きる。この思いと共に、この先を歩んでいきたい。その中で、結婚という生き方を選んだ時、きっと不安を抱えながらも、大切な人と生きていくための努力を、私はし続けるのだろう。