あんなにも大好きだった彼は見る影も無くなっていて、まるで別人だった。それでも、柔軟剤の匂いだけは変わらないんだなぁって冷静に感じていた。彼が変わってしまったのか。いや、私も変わったのだろう。

環境に適応し変わっていくのに、変わらないことを求め失望に変わる

こうなってしまったのは何故なんだろう。車で移動出来るようになったから?大学が違ったから?タバコを吸うようになったから?
そんなことで3年以上築き上げた関係は崩れてしまうのだろうか。高校から変わらず通ってる一杯250円の紅茶を飲みながら考えていた。
楽しかったね。またいつか会えたらね、と席を立った。

本当はわかっていた。私だって日々彼への不満を漏らしていた。でも、腹を割って話し合えなかった。
新しい環境に適応する前は2人とも不安な気持ちは同じで続いていたが、適応すれば話は変わってくる。それなのに、お互い変わらないことを求めた。自分の変化を認めず相手への失望ばかりしていた。
こんな状況をダラダラと続けていたら、極め付けは浮気ときたもんだ。でも、私は彼を怒れなかった。しちゃったことは仕方ないよ、なんて言ってた。
本当は謝って欲しかった。

アオい私はずっと一緒だと信じ、ごめんね大好きだよ、が欲しかった

あなたを信じて返信を待つ日々の苦しさを知って欲しかった。知らない女の子の家に泊まっている様子を、友達のインスタストーリー伝いでなんて見たく無かった。私はどんなあなたのことも大好きで、どんなあなたでも許せた。一言、ごめんね大好きだよ、と言って欲しかった。

でも、あなたは自分のやったことが如何に酷なことかわかっていた。だから謝らなかった。ただ認めた。少しでも優しくすると、私が尻尾を振って全てを許すこと、そしてこの関係を続けてしまうこと、長い間隣にいたあなただからこそ知っていた。
だから、私が別れを切り出した後、ごめんね。と言ったのを私は知っている。

アオハルとはよく言ったものだ。
毎日私のためにお弁当を作ってきてくれたこと、雨の日は一緒に帰れたこと、放課後長いマフラーを毎回巻いてくれたこと、バイト代叩いて買ってくれたネックレス、全部私のハルだった。
まだアオい私は信じてた。ずっと一緒だって信じてた。
この気持ちを大切に温めて、水を与えて、雨嵐から守って、立派な大樹にしていくんだと。

高校生の私へ、勝手でごめんね。でもこの恋を知れてよかった

だから、高校生の私へ
ごめんね。私はあなたが信じて育てた苗をダメにしてしまった。あなたはきっと、とても怒るよね。そして話を聞いたら、今度は彼に怒って欲しかったというかもしれない。目の前で泣いて欲しかったというかもしれない。ごめんね、どちらも出来なかった。私もこの恋が大好きで心地良かったの。
だから、酷いかもしれないけど、噛み合わなかった時間を巻き戻すより、美しい思い出として綺麗に綴じるため、終わらせることにしたの。

勝手でごめんね。きっと彼は最後までニコニコにしてる私を覚えてるはずだよ。彼の走馬灯に一瞬にでも出れるなら、笑ってる私がいいでしょ?忘れた頃に思い出す、1番いい女は私がいいでしょ?ちょっとした復讐心だよね。逃した魚は大きいんだぞ!って。
もう、こんなにも胸を焦がす青い春は来ないかもしれないけど、大丈夫、あなたは自分が思うより、素敵で強い女性だよ。だから今は、その恋を大切にしてね。その恋は私に本当の恋を教えてくれたものだから。

そして今の私は知っている。
苗は1人でなく、共同作業で守り育んでいくものだと。
彼はそれを私に教えてくれた。
私は、この恋を知れてよかった。