黒歴史、という言葉がある。大人になった今では恥ずかしい過去の思い出。消したい過去。いつの時代からできた言葉かは知らないが、そんな意味の言葉だ。
でも私は、そんなものは誰にもないと思う。みんながみんな持っているのは黄金の歴史。ゴールデン歴史なのだと考えている。

高校生の頃、それはひどい生徒で。授業で寝る、提出しない、サボる…

何が言いたいのかわからないかもしれないし、それはお前が黒歴史というものを持っていないからだとも言われそうな気がする。
だが、そんなことはない。私にも俗にいう「黒歴史」がある。そのうちの一つの話をしようと思う。

私は高校生の頃、それはひどい生徒だった。授業は寝る、体育は嫌いな種目であればサボる、提出物は一つも出さない、通勤・通学ラッシュが嫌になって途中下車して街で遊びまくる(制服がなかったため街を歩いていてもそんなに目をつけられなかったのだ)、学校をサボってカラオケに行く、学校をサボって近くの公園を散歩…。パッと思いつくだけでこれだからまあもっと色々しでかしているのだろう。
私立ではなく公立だったことも、提出物や出席が最重視されなかったこともあって、留年することはなかった。だからこの酷い有り様は高校3年生まで続いた。
当然の如く浪人した。

怠惰な浪人生活で志望校には受からず、でもこれは「黄金の歴史」

お恥ずかしながら浪人時代も決して褒められたものではなく、「高校4年生」と自身で称して予備校の授業は受けていたものの他の自習はあまりせず遊んでいた。
「授業受ければ受かるんでしょ?」
そう思っていた。

その時代はSNSにもハマっていたから、ネット上に今となっては恥ずかしい投稿をしたという「黒歴史」もコンプリート済みだ。

じゃあこれのどこが黄金の歴史なのか。

その話をするためには浪人した後の話を少しする必要がある。私は浪人して、まあ先述の通りの怠惰な浪人生だったから、志望校には受からなかった。私の高校からはほとんどが行かないような大学に進学した。
入学前はそんな大学に行くのが恥ずかしかったし、進んでその大学名を明かすこともなかった。
その頃の私は自分の高校・浪人時代を黒歴史だと思っていたからだ。

「黒歴史」は、それを生かした時点でもう「黄金の歴史」なのだ

ただ、「黒歴史」だと認識したからこそ変わったことがある。まず一つにかなり必修授業コマ数の多い大学だったが無遅刻無欠席、レポートも全て提出、試験対策も自分に向いた方法を編み出して行った。成績はSとAのオンパレード。たまにBもあるけど。
大学院は希望の某国立大学の大学院に進学した。

そう、私は高校・浪人時代の失敗を振り返ることで大進化を遂げた。今やその高校・浪人時代は、今現在のための投資だったのかもしれないとさえ思う。とんだ自己投資があったものだと自分でも思うが、「黒歴史」はそれを生かせば「黒歴史」にはならない。
「黒歴史」はそれを生かした時点でもう「黄金の歴史」なのだ。

ちゃんと振り返って生かしてないしやっぱり私は「黒歴史」だよ、なんていう人がいたらそれは違う。「黒歴史」と認識した時点で今の自分はそれを続けていないはずで、それは一歩前進なんじゃないかと私は思う。
あるいっときを「黒歴史」と認識した時点で、それは「黄金の歴史」となりうるのである。

そう考えると、今の自分がいつか私の「黒歴史」になろうとも、それはプラスに働くのだから。「黄金の歴史」になるのだから、無難じゃない、やりたい道を選ぼうと思えるのだ。