「人の目気にしてたら自分らしさがなくなると思うんだよね。」
友人が放った一言は、私の心に響いた。

「注目されると恥ずかしい」。幼いころから緊張しいだった私は目立つことが苦手だった

小学校のころから緊張しいだった私は、人前に立つのに物凄く抵抗感があり、できるだけ目立たないように、みんなと同じことをするのに必死だった。
目立つことが苦手な性格は、成長するにつれて徐々に薄れていったが、人前に立って発表するとなると、やはり前日から緊張してしまう。
普段の生活で友人と会話することは大好きだし、何人かでワイワイはしゃぐことも心から楽しめる。人とコミュニケーションを取ることが好きなため、初対面の人でも楽しく会話ができる。
けれども、大勢の前になると恥ずかしさが勝ってしまい、自分らしくいることができない。

「注目されると恥ずかしい、みんなの目線が気になる、人と違うことをするのが怖い。」
こういった思いが自分の中ですごく強いことを、幼いながら感じていた。

卒業式の日。感謝の気持ちを伝えたかったのに、周りを気にした私は何も伝えられなかった

高校の卒業式の日、式が終わったからか、教室ではしんみりとした空気が流れており、生徒と、大勢の保護者がそれぞれいろんな思いを馳せていた。

高校生活最後の授業であるホームルーム。
先生の提案で、一人ずつ教壇の前に立ち、みんなへの感謝の言葉を話す時間が設けられた。生徒が出席番号順に前に出て、一年間お世話になった先生や共に過ごしてきたクラスメイトに向けてお別れの言葉を次々に話した。
中には、最後だからと張り切って、面白いギャグを披露する男子が何人かいたり、みんなと離れるのを惜しんで、途中で涙する女子もいた。
一番仲の良かった友人も、「自分なんで泣いてるの。」と言いながら、高校生活の思い出を語っていた。

そんな中、私は自分の番が回ってくるまでずっと落ち着かなかった。
面白いことをするキャラではないし、緊張で涙も出そうにない、できるだけ短く、できるだけ注目されないようにしたいと考えながら、他の子の話を聞いていた。
男子も女子も、普段おとなしく、人前で話すのが得意ではない子はもちろんいる。そういう生徒は、「一年間ありがとうございました。とても楽しかったです。」と、当たり障りのない、短い言葉を述べた。

すぐに自分の番が回ってきた。
保護者の方にもみられるという緊張から、普段よりも頭が真っ白になってしまい、何人かの生徒と全く同じことを言って、逃げるように着席した。
進路決定の際に親身になって寄り添ってくれた先生や、毎日を一緒に過ごした友人への感謝を、短くてもいいから伝えたかった。楽しかったことはたくさんあった。みんなに伝えることができる、最初で最後の貴重なチャンスだったのに、私は周りの目を気にして、何も伝えられなかった。

私は少し後悔し、自分の性格を悲しく思った。
そして、人前に立つのが得意になりたいと思った。

「人の目を気にしてたらあなたのいいとこが隠れちゃう」。私の心は軽くなった

大学生になったある日、私は友人に「すごく周りの目を気にしてるよね。」と言われた。
確かに自分は無意識のうちに、「他の人と同じように行動しよう、そうすれば目立たないから。」「常識がない、変わってる人だと思われたくないから、話す言葉に気をつけよう。」という考えを持って人と接することが当たり前になっていた。

人間関係において悩みはなかったが、私はこの性格を変えたいと思うようになっていった。
このことを相談すると、友人は「全然変わってるなんて思わないよ、人の目を気にしてたらあなたのいいとこが隠れちゃうよ。」と言ってくれた。

この言葉を聞き、心がスーッと軽くなった気がした。
周りの人からどんな風にみられているかを気にして生活するのは疲れてしまう。
なにより、自分が自分らしくいられることが一番楽しいだろう。人の目を気にしていたら、自分のやりたいことができないということに気づいた。
友人のこの言葉は、周りにどう思われるかを恐れず、自分らしさを大切にしようと思うきっかけとなった。

私は、何かに挑戦するとき、行き詰ったとき、友人が言ったこの言葉を思い出して、深呼吸をする。