私はアパレルでアルバイトをしている。普段から女の子らしいお洋服が苦手でよくメンズものを着ている私はある日ありがたいことにお客様から「あなたのそのお洋服素敵ね、どこにあるのかしら」と声をかけてもらった。私は嬉しくなってウキウキしながらお客様を私が着ている服が置いてあるメンズの売り場までご案内した。

ジェンダーレスファッションの理解、まだ理解されていない

そうしたらお客様が「え、これはレディースのもの?」と聞いてきたので、「いえ、男性ものです。」と私は答えた。するとその後衝撃的な一言が返ってきた。「女の子なのに男性ものを着ているの?男性ものなら遠慮しておきます。」私は一瞬頭が真っ白になった。「そうですか。申し訳ございません。」と返すことで精一杯だった。その場はそれで終わったがどうしても納得いかなかった。なぜ女の子が男性もの着てはいけないのか。一度でも素敵だと思った服をそんな理由で着ないのか。もったいない。それとも私が間違っていたのだろうか。色々な感情が自分の中でひしめき合った。
今はジェンダーレスファッションなどが流行ってきてそういった偏見は少し耳にするくらい。「古いな~」と他人事のように思っていたが、実際自分を対象に言われるとかなり傷つくものだ。私はひどく落ち込んだ。

そして後日この一件でモヤモヤしていたところ、授業で「多様性を認める」という言葉について考える時間あった。
多様性を認めてもらえなかった私にとって改めて頭の中を整理するいいチャンスだった。

私は「多様性を認める」とは自分の考え方が間違っているかもしれないと捉えることが正しいと思っている。ただ心の中で受け入れるだけではなく、自分の中の当たり前は他の人にとっての当たり前じゃないかもしれない。間違っている可能性があると慎重に考えることで横柄ではなく謙虚に相手のことを理解できるのではないかと思う。とはいえ、そんなに簡単なことではない。未だにジェンダーレスファッションに関して理解のない人がいる事実。これを知ってからは、まずそういう人もいるんだということを理解してもらうところから始めないと仕方がないと痛感した。

ジェンダーレスに対する不自由さが無くなる未来へ

今では男性も女性の服を着て女性も男性の服を着る。アパレルで働いているとよくわかる。この文章を書き始める少し前にお店に来たお客様は私と同い年くらいの男性で、私にこう言った。「女性のパンツのXLサイズは僕でも着れますかね。形とか変わっちゃわないですか?」その後すぐにこう付け加えた。「すみません。男なのに女性もののこと聞いちゃって。」とても不安そうな顔だった。そんな顔をしてほしくない。着たい服を自信持って着てほしいと思い、パンツのサイズについて私が持っている知識をありったけ使い、細かく説明すると「丁寧に教えてくださりありがとうございます。いつもレディースの服を買って帰ると親に男なのにと言われるんです。」と。私も似たような経験をしたことから胸がギュッと苦しくなった。でも私は間違っていなかったと安心することもできた。確信が持てた。それでも服に限らず様々な場面で多様性が認められない風潮が残っている。

お客様のこのひとことから改めて気づくことができた私は少しでも気兼ねなく男女が洋服を買える世の中を作っていきたいと思い将来の夢を決めることができた。
これが私を変えたひとこと。