高校2年生のころ、同じテニス部、同じクラスで、頭が良くて、するどいツッコミが面白くて、一緒にいて心から楽しいと思える人がいた。
最初はただの友達だったけど、二人だけの時間が増えてだんだんと距離が近くなっていった。

表向きはただの仲良しな友達 でも二人きりの時は恋人同士

ある時あなたが「このままだと本当に好きになっちゃうよ~」と言ったとき、私はもうすでにあなたのことが好きだったから「いいよ」って答えた。

そこからは二人だけの秘密だった。
表向きはただの仲良しな友達。
でも二人きりの時は恋人同士。
どっちが女とか男とかそういうのもなくて、お互いがお互いのままで大好きだった。

みんなの前では手を繋げないから、二人になった瞬間に繋いだ。
みんなが帰った後の教室で、こっそりキスをした。
二人きりの時間が大好きで、とても幸せだった。

当時は今ほどLGBTという言葉も有名ではなかったし、なんとなく、これはレズビアンってやつだなと他人事みたいに思ってた。

私は普通の人じゃないのかなって思うとなんだか怖かった

正直に言うと当時は、レズビアンもゲイもなんだか気持ち悪いっていう印象があったし、腐女子がBLを読んでウハウハしている、そんな感じだった。
だからまさか自分が同性を好きになって、付き合っちゃうなんて思ってなかったし、男性のことも好きになったことはあるから、自分は男性が好きなのか、女性が好きなのか、どっちも好きになれるバイセクシャルってやつなのか。
私は普通の人じゃないのかなって思うとなんだか怖かった。

そんな風に思ってたから、沢山嘘ついた。
友達と恋バナしても、「今好きな人いないんだよね。彼氏ほしいなぁ」。
家族に聞かれても、「今は部活が楽しくて。いつかかっこいい人連れてくるね」。
自分に対しても、「私のこと好きって言われたから、なんか流されちゃったのかも」。

学校帰りに、二人でいつもの河川敷を歩いていたとき、「めぐも将来結婚して子供出来たりするのかな~。なんか嬉しいけど寂しいな~!」と言ってあなたはちょっと悲しい顔して笑った。
私もあなたが大好きだったけど、そんな自分が変なんじゃないかと思ってたし、同性のあなたとの将来は考えるのが難しすぎて、何も返事ができなかった。

そうしてあなたは私から離れていった。
すっごくすっごく大好きな人だったのに、自分の気持ちに嘘をついてしまったせいで、あなたを傷つけた。
結局、恋人にも、友達にもなれなかった。

「あなたが大好きだったんだな」ってようやく受け入れられた。

それから数年経って、セクシャルマイノリティのセミナーに参加した。
自分の知らない言葉を沢山知った。
世の中には自分が思っている以上に沢山セクシャルマイノリティの人がいると知って驚いたし、自分の思っていた普通が全然普通じゃなかった。

そして、パンセクシャルという言葉も見つけたとき、自分にしっくりと当てはまる感覚があって、涙が止まらなかった。
パンセクシャルとは全性愛という意味で、性別に関わらず全ての人を好きになれるという特性のこと。

あなたと付き合っていたことを黒歴史として自分の中に閉じ込めていたけど、私は、女性だからあなたが好きだったというより、「あなたが大好きだったんだな」ってようやく受け入れられた。
当時の自分がパンセクシャルという言葉を知っていたり、LGBTについてもっと理解があったら自分の気持ちに嘘をつかなかったのか、知っていても嘘をついて隠してしまってたのか、それは分からないけど、後悔しても過去には戻れない。

あなたが好きという自分の気持ちを受け入れられなくてごめんなさい。
そして私のことを好きになってくれた大好きなあなたへ、素直に大好きだよと伝えられなくてごめんなさい。