コロナ前はよく行っていた飲み会。私はいつも行く前にコンビニのATMで9000円を下ろしていた。1万円も10千円と入力すれば千円札ででてくるらしいけど、細かく下ろすためだ。最後の残高の画面は目を伏せて見ないようにして、領収書も発行しない。財布には常に野口のキープのキープくらいまではいるようにしていた。

付いたあだ名は、千円投げババア。とんだ妖怪の爆誕である

女だから、若手だからといってすんなり奢られるほどかわいい性格や面構えをしていなかった。いいっすよいいっすよ!と言いながら片手いっぱいに掴んだ野口を差し出す。異性と飲みに行っても私の方が飲んだから!と多めに出したし、歓送迎会帰りに課長とタクシーに乗った時も去り際に野口を投げ渡して帰った。そうこうしているうちに付いたあだ名は、千円投げババア。とんだ妖怪の爆誕である。

奢られ女子を批判するつもりは毛頭ない。むしろかわいく奢られることができるその姿勢や愛嬌が羨ましいくらいだ。人の厚意にうまく甘えたり、かわいげのある応対をしたりすることができず、見様見真似で同世代の女子の真似をしようとしても非力ぶったゴリラのようになってしまう。かわいそうな千円投げババア。どうにかならないものだろうか。

今まで投げてきた千円で、どれほど他の人によく思われたのだろうか

そもそも私が必要以上に多く払いすぎてしまうのは、自己肯定感が低い人間だからかもしれない。私は奢られるほどの価値がない人間だ、そんなのは申し訳ない。私ほどのやつがお言葉に甘えたら厚かましいって思われるかな?とりあえずパーパー出しとけば、思い切りのいいやつだと嫌われはしないでしょう。

書き出してみると我ながらスーパーネガティブ都合いい女である。大好きな3丁目のオカマバーに行けたなら、このおブス!とママに叱られるに違いない。

今まで投げてきたあの千円で、一体私はどれほど他の人によく思われたのだろうか。きっと思っているほど、失ったものも得たものもない。

ごめんね野口。思っていたより無価値な場面で、あなたという手札を使ってきたような気がする。

めちゃくちゃ他人の目を気にしている私が、生きやすくなりますように

コロナで野口を投げる先もなくなった。頻繁にあるとなんとなく充実しているような感じがして一生懸命行っていたあの飲み会も、なければないでいられる。気づきたくなかったけれど、なんなら少しホッとしている自分がいるくらいだ。

せっかくなら、自分の自己肯定感を上げるために自己投資でもしてみようか。

キャラじゃないと思って普段は言わないが、本当はデパコスやアクセサリーなんかのキラキラしたものが好きだ。新しいコスメを開けてそっと自分の肌にのせる時。身につけたアクセサリーに光が当たってキラリと反射したとき。そんなときに感じるときめきは、上手に奢られ女子達と一緒かもしれない。なんだ、私にもちょっとかわいい所あるじゃんね。

自分らしく生きたいとほざきながら、本当はめちゃくちゃ他人の目を気にしている私が、少しでも生きやすくなりますように。そう願いながら、私は気になっていたデパコスのリップをポチった。