突然ですが、皆さんは学生のころに、先生から言われた忘れられないことばは、ありますか。

私は高校生のときに英語の先生が言ってくれたことばです。それは、高校二年生でいじめで悩んでいたときでした。

学校の女子の人間関係ではグループというのがあって、なんとか自分がどこかのグループに属していないといけないという雰囲気がありました。あるとき、些細なことで、グループの中の一人と喧嘩みたいになりました。すぐ仲直りできるかなと思っていたのですが、それからグループから一人はぶられるようになりました。

しかも、タイミングが悪いことに、それが修学旅行前。

その後、班決めをするとき、私は地獄を味わうこととなります……。

どの班にも入れず、もといたグループの子にも知らん顔をされる

担任の先生が「修学旅行で最後の思い出作りやし、班は仲のいい子どうし、好きなもんで作ってええで~」と言いました。

それは当たり前のことだし、平和な学校なら、それが普通かもしれません。

でも私は内心焦りました。私には行き場所がない……。周りが、やった!一緒になろ!あはは!ってうれしそうに集まって班を作り、決められた人数をクリアして座っていく中、一人ぽつんと立つ自分……。

周りの視線が自分へと向けられ、みんながひそひそ、かわいそうとか、えっ、あの子とか言っていました。もうほんとにあのときは、公開処刑だと思いました。

もといたグループのところに近づいてみますが、一緒になりたくないわと知らん顔。

向こうからしたら、ざまあみろみたいな感じでしょう。

先生が「ああ、誰かしばしばを入れてあげてくれへんか?」と言ったときも、みじめで情けなく感じました。「~してあげて」という言い方も、ああ、私が1人余ることでみんなに迷惑をかけてるんだなと再認識してしまい、つらかったんです。修学旅行は最後の思い出だし、よく分からない1人がグループに入ってくるのも嫌だろうなと、周りのみんなの気持ちにも同情しました。

「早よ仲直りしいや」。担任の先生は、いじめを認識してくれなかった

そのときの班決めは、担任の先生の「まあ、あとでなんとか考えるわ。とりあえず終わりー」で中断されました。

ーー本来、楽しい思い出になるはずの修学旅行。それが、こんなに辛い思い出になるなんて。休み時間、教室を出てトイレで泣いていたのを覚えています。

担任の先生に、いつものグループと何かあったんか?

と聞かれたので事情を話しましたが、もう早よ仲直りしいや、で終わりました。ややこしい、めんどくさいことすんなやって感じでした。いじめとは認識してくれなかったのです。

悔しくて誰に助けを求めようと思ったとき、頭に浮かんだのは、前の学年のときの担任の先生で、英語の先生でした。その先生は、生徒の悩みをいつも親身になって相談に乗ってくれて、いじめは絶対に許さない!と熱くて正義感あふれる女の先生でした。

自分はその先生の担当のクラスの子でもありません。でもこの先生なら、ちゃんと話を聞いてくれるかもしれない!と私は思ったのです(この人なら!と信頼できる相談相手がいるのって大事ですよね)。

私が遠慮がちに英語教科準備室を訪れたとき、先生は久しぶりと笑顔で迎えてくれました。

そして、修学旅行の班決めの話をして、つらい、これからどうしたらいいだろうと相談していくうちに、うつむきながら、ぽろぽろと涙が止まらなくなりました。ふと、顔をあげて先生の顔を見ると、先生も泣いていました。

「世界はね、あなたが思っているよりもずっと、ずーーっと広いんだから」

つらかったね、よく今まで頑張ったねと共感してくれて、自分事のように考えてくれていました。そして「ねえ、これを見て」と一枚の写真を引き出しから出して私に見せてくれたのです。

そこには現地の外国の人たちと一緒に民族衣装を着た笑顔の先生の姿が写っていました。

「ねえ、これ、すごいでしょ。アフリカに行ったときの写真。楽しかったなあ」

それから先生は目を輝かせて今まで行ったたくさんの外国の話を、してくれました。そして「世界はね、あなたが思っているよりもずっと、ずーーっと広いんだから。だから大丈夫よ」と言ってくれました。

「あなたは、たまたま、この国で、この学校で、そのクラスの一人として教室にいてるけど、すごく狭い世界だと思うの。そこを飛び越えてみたらきっと驚くわ。世界は広いから、狭いところでうまくいけなくても、きっとあなたが生き生きと笑顔で輝けるところは、必ずあるから!」

そういって、肩をぎゅっと抱きしめてくれました。

そっか、私すごく狭い世界にいて悩んでいたんだ。学年が変わって卒業したら、明るい未来が待っているんだと、希望を持つことができたのです。

ーーあれから、大人になって働きだしてからも、英語の先生のことばが心にずっと残っています。大人になってからも人間関係の悩みはつきもので、でもそこは狭い世界で飛び越えたら世界はずっと、ずーーっと広いんだ!そうやって環境を新しく変えながら、前向きに生きてこれました。

何度でもやり直せるし、変わることができる。

いつか、あのときの英語の先生みたいに、民族衣装を着て世界中を旅してみたいです。