人生で久しぶりに好きな人ができた。大学の同級生で、ほぼ毎日顔を合わせる人。思いやりがあって頭が良くて、私なんかじゃ釣り合わないと思うほど素敵な人だった。
時々二人でごはんを食べに行ったり、ライブを観に行ったりする位には仲が良くて、もう少し距離を縮められたらいいなと密かに思っていた。

私はもしかすると間違ったことをしてしまったのでは

そんなときに、二人で夏フェスに行くことになった。移動時間は長いし、ほぼ一日中一緒に行動することになる。今までのお出かけとはちょっとレベルが違う。
私と過ごす時間を楽しいと思ってもらいたい、私を好きになってもらいたい、嫌われたくない。フェス当日までに、そんな想いがどんどん増していった。
だから、スムーズに移動できるように交通手段を調べたり、気が利くところをアピールしようと思ってウェットティッシュを用意したり事前準備は怠らず、観たいアーティストも彼に合わせようと思っていた。

でも、当日は予想を上回る猛暑に見舞われた。朝一のライブがスタートした時点で私はもう熱中症ぎみ。思うように行動できなかった。
彼に迷惑をかけたくなくて、ライブの途中で倒れたりしたらどうしようと不安で、お客さんが激しく動くアーティストのライブを観に行くのが特に怖かった。それに、私のせいで彼が自由に会場を回れていないんじゃないかと思って、一緒にいるのが申し訳なかった。

彼が一番観たいと言っていた激しいパフォーマンスのアクトの時間が近づいてきた。ライブを楽しんでもらいたいという思いから、私はライブが始まる直前に「違うアーティストを観てくる」と言って彼と別行動することにした。
そのときは頭がいっぱいで何も考えられなかったけど、その後合流したときの彼の反応を見て、私はもしかすると間違ったことをしてしまったのではないかと気がついた。
帰りのバスの中では、ほとんど二人の会話はなくなっていた。

フェスの後、彼の反応はそっけなくなっていた

私は、自分のことしか考えられていなかった。自分が嫌われたくない、恥ずかしいところを見られたくない、ということばかりに囚われて、自分の言動によって相手がどう思うかを想像しようともしなかった。
自分に自信がなくて、相手が私のことを好きかもしれないということを考えてもみなかった。
私と彼が逆の立場で、理由もなく急にそんな勝手な行動をされたら絶対に傷つくと思う。迷惑をかけたくないというのが理由だったとしても、なんで自分を頼ってくれないんだろうと悲しい気持ちになるはずだ。

フェスの後に大学で会って話しかけても、彼の反応はそっけなくなっていた。
このまま疎遠になってしまうのはあまりにも辛すぎるので、私は正直に謝ることにした。
「あの日体調が悪くなって、これ以上迷惑かけて嫌われたらどうしようと思って、自分勝手な行動してごめんね」と伝えると、彼は笑って許してくれたように見えた。
でも、お盆明けに再会しても、彼の私に対する態度は冷たいままだった。
やっぱり許してもらえなかったんだと、大学卒業までの約半年間、自責の念が消えることはなかった。

本当に彼のことが好きなら、彼のことを一番に考えるべきだった

卒業を間近に控えたある日、もう会えなくなるかもしれないと思って気乗りしない彼に無理やり時間を作ってもらい、もう一度あの時の話をした。彼は「本当に気にしてないよ」と言っていた。
じゃあ、彼の心が離れてしまった理由は何だったのだろう?

私は、やっぱり自分のことしか見えていなかったんだと思う。
後から考えれば、彼のリアクションが冷たくなったのは、彼が教授からダメ出しを受けて卒論で苦労していた時期と重なる。それなのに、私は自分が嫌われていないかどうかを確かめるので必死で、ごはんに誘っては断られて、一人で勝手に落ち込んだりしていた。フェスの日の反省を、何も活かせていなかった。本当に彼のことが好きならば、彼のことを一番に考えるべきだった。励ましの言葉のひとつでもかけてあげればよかった。
あの日、謝るべきはフェスの日のことではなかったのだ。

自分に自信がないせいで彼の気持ちに寄り添えなかったこと、もう二度と会うことはないけれど、心から謝りたいと思っている。