親友に「あなたとはもう会いません」と言われた日を今でも覚えている。
思い出すだけで胸が苦しくて、涙は出ないのに嗚咽がもれそうになる。今も彼女を夢に見る。
いつでも彼女の「あなたは正しいから」が私の支えだった親友
友だちになったきっかけは、小学生の頃にいじめられていた私に彼女がかけた一言だった。
「私は、あなたが正しいと思う。だから誰もいなくても、私だけは味方だよ」幼い私にはその言葉の重みがわからなかったけれど、ただ嬉しくて、泣きながら満面の笑みで答えた。
大人になるにつれ、その一言が私の手のひらに確かな重みとして残った。「彼女だけは私の側にいてくれる」「彼女だけは私を理解してくれる」と。
自由奔放で馬鹿正直な私は、空気を読まずに発言をすることもあり、何度も痛い目を見た。でも、いつでも彼女の「あなたは正しいから」が私の支えになった。
困った時は一番に相談して、恋の相談も何度もした。一緒に漫画を読んだり、自転車で遠くまで遊びに行ったり。2人で演劇を見に行ったこともあったし、お泊まりだってした。20歳を超えても尚、仲良くしてくれる彼女との友情は永遠に続くと思っていた。
亀裂が入り始めたのは3年ほど前だ。彼女が仕事で忙しくなり、私はまだ学生のままだった。
「あなたとはもう会いません」と親友から送られてきたメッセージ
私は大学で上手くいかなかった人間関係や両親との確執に悩まされ、リストカットを繰り返し、自殺未遂をはかるなど精神的に不安定な日が続いた。うつ病と診断され、大学を休学し、実家に引きこもった。そんな私が唯一心の中を話すことができたのは彼女で、たまに会っては今悩んでいることをぶちまけたり、何度も繰り返し肯定してもらっていた。
しかし、徐々に連絡が取れなくなり、遂にはLINEも電話も繋がらなくなってしまった。私は怯えた。「彼女の身に何かあったのでは?」と。
「今年の夏は一緒にお泊まりしようね」と何度も話していたのにも関わらず、連絡が取れなくなるなんて、何かあったに違いないと。まさか私に原因があるとは、露ほども思いもせずに。
しばらくして、彼女のSNSが更新されているのを目撃した。携帯が壊れて私と連絡が取れなかったのだろうか? そう思った私は「あなたの身に何かあったのではと心配です」と彼女にメッセージを送った。
返ってきたメッセージは「大丈夫です。私は人間関係を断ちたいと思ったので、あなたとはもう会いません」と書かれていた。
驚いたのが正直な感想だ。「私は何かした?」と繰り返し聞いた。「あなたといると疲れるから」これが、彼女の最後の返答だった。
彼女を頼りすぎていた。悩みを聞いてくれる彼女に甘えていたのだ
私は苦しくて苦しくて、何度も泣いた。私の何がいけなかったのだろうと考え続けた。私にとって彼女はすべてだった。彼女の答えで安心し、彼女が肯定してくれることで自分を肯定できた。彼女の友だちである、それだけで私は自信が持てたのだ。
きっと、それがいけなかった。私は彼女に頼りすぎていたのだ。いつでも自分の悩みを聞いてくれる彼女に甘え、一番力を使う“人を肯定する”という作業をずっと彼女に課していた。私は彼女の存在を通してしか、自分を認められなかった。私は自立できていなかったのだ、ずっと。
彼女は去ってしまった。もう二度と関係は元には戻らない。
けれど、私は彼女のことが今でも大好きだ。彼女の友人“だった”ことを誇りに思うし、彼女が今まで注いでくれた愛を忘れずにいたいと思っている。
私にできることは、彼女に恥じない自分になることだ。自分のことを認め、良し悪しをまるっと飲み込んで、大人として二本の足で立つこと。自分の足でしっかりと大地を踏みしめて、自分自身をきちんと理解すること。それが彼女にできる唯一の贖罪だと考えている。
私の中で彼女の記憶は止まったままだが、私の時間は止まらない。進み続ける道の上で、いつか交われる日が来ることを祈りながら、私は自分の足で歩いていこうと思う。