あなたに謝りたいこと。
ふとホームで電車を待っている時、お風呂でシャワーを浴びている時、ささいな日常の中で私はあなたに謝りたいのです。
大好きだったあなたは私の全てで、そしてクラスの人気者になって、そして…
あなたとの出会いは保育園。その頃からとにかく私はあなたにべったりで、どこへ行くにもあなたの横を離れない。そんな私をあなたはいつも受け入れてくれました。家が近く、鍵っ子だった私にとって、あなたの家は第二の我が家のようで、毎日遊びに行ったほどです。ポップコーンを作りコーンの弾ける音にたまらなく興奮したり、編み物を教えてもらったり、犬の散歩をしたり。毎日がとにかくあなた一色でした。
それでも小学校でクラスが離れると少しずつ私たちの環境は変わっていき、いつも一緒だった下校の時間までずれていきました。クラスを隔てるたった一枚の壁が、私にとっては大きく、決して破ることができないものなんだと、小さいながら難しく考えてしまったのです。
あなたならきっと「そんなこと全然ないのに」と手を引っ張ってくれただろうに。
それからあなたは、持ち前の明るさと面倒見の良さで、クラスの人気者になっていきました。休み時間になる度に、みんなが机を囲み、賑やかに過ごしているのを廊下から見ていました。勉強もできて、持久走も一位。そんなあなたを私はもう独り占めできないのだと、寂しく感じていました。
またクラスが同じになっても私の心が晴れるわけでもなく、むしろ度を超えた嫉妬と独占欲で自分がおかしくなっていくのを感じました。その今にも爆発しそうな感情を、私は勉強に注ぎました。おそらくその頃の私は勉強はできるけど、結構嫌な子だったと思います。
しかし中学生にもなると、仕方のないことを少しずつ理解できるようになり、私自身も離れるのには慣れていたので、周りに馴染むことを優先して行きました。元々明るい性格ではあったので、すぐに友達はできました。女の墓場と呼ばれた女子バレーボール部では上下関係でいろいろ悩む時間は確かにありましたが、それでも日日充実していました。
そんなこんなで、私があなたへの執着を手放した時。あなたは学校に来なくなっていました。
あなたは今どうしていますか?私の想いをきちんと伝えたいです
私は母から聞きました。同じクラスの人にいじめられていた事。そんなこと1ミリも知りませんでした。
いてもたってもいられなくなり、その日私はあなたに手紙を書きました。メールアドレスも知っていたけど、手紙の方が想いが届くと思って。
「久しぶりに手紙を書いたよ」
「元気?」
大丈夫なわけがないことはわかっているのに、上手い言葉が見当たらず、よそよそしい手紙をポストに入れました。
「今度遊ぼうね」
「会いたいな」
2通目、3通目と毎日のように手紙を送り続けましたが、返事は来ませんでした。
何もできない自分に憤りもありましたが、手応えのなさに少しだけイライラしていたのかもしれません。
「逃げちゃダメだよ!」
図らずも最後になってしまった手紙に私はこう書きました。あなたは逃げていたのでしょうか。学校に行くことが逃げないことだったのでしょうか。最後の手紙を送った日、あなたはメールをくれました。
「これから渡したいものがある」と。
可愛らしいハンドメイドの毛糸のぬいぐるみ。そしてあの時と変わらぬ優しい声色と笑顔。
私は想いが通じたのだとすごく嬉しくなりました。
すぐに帰ってしまったあなたに、メールで「ありがとう。大切にする!」と送りました。
……アドレスは変わっていました。
私たちはそれから会っていません。
私はあなたのためだと履き違えた正義で、あなたを傷つけてしまいました。あなたを救えるのは私だけという優越感に浸りながら。
どんなに苦しかったか、どんなに心が痛かったか。それをわからぬまま言葉で追い詰めてしまいました。
あなたは今、どうしてますか?
この前、母からスーパーであなたに偶然会ったと聞きました。
いつか、許されるならもう一度だけと言わずに何度でも会いたいです。あれから私、少しだけ大人になりました。でもあなたのことが大好きなあの頃のままのです。
ごめんね、ゆっちゃん。