働く理由なんて、正直なかった。
学校卒業したらみんな働いているし、お金も欲しいし、そもそも働かないのは世間体が悪い。親も悲しむだろうし、友達にも言いづらい。強いて言うなら「社会の中の居場所を保つため」に働いていた。それ以外の何物でもなかった。
言わないだけでみんなそういう風に考えているものだと思っていた。

そんな私が働く理由を見出せたきっかけは転職だった。

学生の頃から「卒業したら働くけど、すぐに仕事を辞めたい」と思っていた。
早く結婚して、寿退社したかった。結婚したら仕事していない人もいるから体裁は保てるし、家計が苦しければパートでもやればいい。
そんな舐めた考えで就職活動をしていたから、当然、自分に合う企業に勤められる訳がなかった。自分に合わない仕事はしんどかった。仕事終わりに泣くこともあった。

早く辞めてやる。
ずっとそう思いながら働いていた。

働いて一年。すぐにでも退職したかったが、恋人とはすぐに結婚出来る状況にはなく、辞めてフリーターとして生きる勇気もなかった。
どうせ働くならもう少し楽に働きたい。そう思って、転職サイトを眺めていたところ、福利厚生が魅力的な企業を見つけた。
特に深く考えず、「今より仕事楽そうだし福利厚生が良いし…」と応募した。

そんな理由だったのにも関わらず、まさかの内定。今でも運がよかったとしか思えない。

転職したら仕事が楽しいと思えるように。社長から学んだ誠実さ

そんな舐めた社会人だった私が転職後、仕事が楽しいと思えるようになった。
変わった一番の原因は社長だ。
転職前は業界シェアNo.1の、グループ企業もたくさん持っているいわゆる大企業に勤めていた。社長と直接話したことはないし、顔を見たのも入社式くらい。

転職した先は数十人規模のお世辞にも大きいとは言えない小さな企業だったから、必然的に社長との距離も近かった。社長は社員の潜在能力を引き出し、成功体験を与える天才だった。社員のパフォーマンスを向上させる機会をたくさん与えてくれた。

そして何より、社員全員に対して誠実な方だった。声をかければ、いつでも個人面談をしてくれた。社員全員と関わろうとしており、一人一人の能力や状況を常に把握していた。

ずっと影になる社員が出ないように気を配り、社内会議で個人名や部署名を出して褒めることも多かった。社員に誠実であることを求めていた分、自分が誰よりも誠実であろうと常に努力していた。私は社長から誠実であることの重要性を学んだ。

大した仕事はできないかもしれない。でも、誠実に向き合うことに意味がある。
そう思って仕事をすると次第にやりがいを感じるようになった。
自分の成長を実感でき、仕事をするのが楽しかった。

社長がしているように、関わる人全員に誠実に向き合う

そんなある日、社長との個人面談で「誰に対してもどんな仕事に対しても誠実に向き合っている姿勢が素晴らしいと思っていました。いつも感謝しています。」
と言われ、すごく驚いたのを今でも覚えている。

正直、嫌な仕事もあった。そんな時でも関わる人全員に誠実な対応をすることができていたのは、社長が全員に対して誠実に向き合い続けていることが実感できていたからだ。
その社長に誠実である部分を評価されるなんて思ってもみなかった。

そこからプライベートでも自分に対しても人に対しても誠実に向き合い、誠実でいてくれる人と仲良くするようになった。深い話をできる大切な友人が増えた。自己肯定感を下げてくる不誠実な恋人と別れることができた。趣味だったピアノや読書も頻繁にするようになった。好きな人と好きなものに囲まれて生きられるようになると毎日がご機嫌に過ごせるようになった。仕事での経験が人生を豊かにしてくれた。

この会社でもっとたくさんの経験を積んでこれからの人生をより豊かにしたい。
そして私自身も誰かの人生を豊かにするきっかけをつくりたい。

これが今の私の働く理由。