「私を変えたひとこと」、そういわれて私が真っ先に思い浮かべたのは、ある男性アイドルの言葉だった。
テレビのバラエティ番組で芸能人が中学校を訪れ、最後に講堂で特別授業を行った。生徒の質問に答える中、私を変えたその言葉はとびだした。
「楽しいから笑うっていうよりも、笑ってれば楽しいことあるかなって考えます」彼は微笑みながらそう話した。
当時中学入学を数日後に控えていた私に、驚くほど簡単に、しかし、とても深く、そのひとことは刺さった。
「笑っていれば楽しいことがある」を常に意識して過ごしたら
小学校の6年間を楽しく過ごした私だが、地元の多くの友人とは違う学校、それも中・高一貫校の女子校に入学することが決まった。新しく始まる中学校生活だが、知り合いは誰ひとりとしていない。そんな状況が不安でたまらなかった。
友だちのつくり方は?
知り合いが一人もいないのは私だけ?
そんなことを延々とひとりで考えていた。
そんな時に彼の言葉を聞き、「ごちゃごちゃ考える前にとりあえず笑おう、笑っていれば楽しいことがあるはず」と考えるようになった。
彼の言葉を胸に過ごした中・高の6年間は私にとってかけがえのないものになった。今思うと、入学前悩んでいたのは夢だったのかとさえ思う。
入学初日に、「楽しい」以外の感情が見つからなかったからだ。入学初日に得た感情は本当に6年間ずっと途切れることなく続いた。もちろん、「笑っていれば楽しいことがある」を常に意識して過ごした。
その行動が功を奏したのか、あんなに離れるのが嫌だった小学校時代の友人とは会わなくなったが、私はむしろ中・高の方が楽しいと感じていた。そんな楽しい日々もあっという間に過ぎていった。とうとう高校を卒業してみんな別々の道に進む時が来た。
心の持ち様で気持ちは変化する。彼の言葉を心にキープして
私は小学校を卒業する時と同じ、寂しい、離れたくない、新しい環境が不安だ、という様々な感情に襲われた。
しかし、大学に入学すればまた、楽しいことがたくさんあって、この感情はすぐになくなるんだ、そう考えていた。しかし、現在に至るまで、その感情がなくなることはなかった。
ずっと中・高時代の友人が恋しく、寂しいのだ。
そんな私と同じ感情を抱いている友人を見つけ、大学入学当初から、定期的に電話をしている。
思い返してみると、大学に入学した時の私は「笑っていれば楽しいことがある」という言葉を忘れ、意識して笑うことを忘れていた。
「楽しいから笑うっていうよりも、笑ってれば楽しいことあるかなって考えます」
もしかしたらこの言葉を聞いた人の中には、「楽しくないなら笑わなくてもいい」「ただ作り笑いしているだけ」「自分をだましてる」なんてことを言う人もいるかもしれない。
私はその人たちの考え方を否定するつもりはない。
しかし、私が意識して笑うことによって、一生忘れられない日々を過ごすことができ、かけがえのない友人を得たことは紛れもない事実である。
それだけは揺るがない。
1年後には、社会人という新たな環境に飛び込むことになる。その時には、絶対に彼の言葉を忘れないことをここに誓う。