新卒から勤めた会社を勢いで辞めて数ヶ月経過した。最近、次のキャリアにつながる職が決まってちょっとずつ社会に出ようとしている。この半年は、自分は何をするべきなのか考え、新しいことをしてみる期間だった。
崇高な使命や隠れた才能と出会えるかと思っていたけど、そんなものはなかった。ただ家にいるだけだとモヤっとして、自分のプライドがむくむく出てきて落ち着かないから、働くことにした。

なんで仕事したいんだっけ。世間体?

昨年まで携わっていた営業職は元々やりたい仕事ではなかった。コロナ禍で在宅勤務になると仕事量が増えてプライベートまで侵食してきて、体調を崩すことが多くなった。配偶者に養ってもらえる算段はあったので、逃げるように退職した。
疲れきっていた私は、転職活動では興味が持てない会社に応募する気力はなかった。しかし転職エージェントからオススメされるのは経験した営業ばかり。

「働かなくていいよ。俺の稼ぎだけじゃ不安なの?」
夫は不満そうな顔で言う。次やることが決まらない私は焦っていた。なんで仕事したいんだっけな。世間体?
今の時代、女性は「旦那に経済的に頼るのはダメです。結婚後も仕事を辞めず、スキルアップを!」と世間に口すっぱく言われているのだ。雑誌やネット記事を読むと、どのメディアでも識者やバリキャリウーマンの先輩からの叱咤激励のお言葉が並べられている。
その通り、人生何があるかわからない。明日、散歩してたら車が飛び出してきて夫はこの世から消えるかもしれない。そういう妄想もする。

家族は優しい。でもこの世界は厳しい

「妻も働いた方がいい」という価値観は最近は日本にも浸透している。私も、大学時代からその価値観を信じて疑わなかった。専業主婦である母親に「絶対に私は専業主婦にはならないから!」と生意気にも宣言していた。
でも、今となっては人ぞれぞれだよねって思える。一度家に入ると、そこから抜け出すのはなかなか難しい。まず家のことが基準となるし、転職市場は何だかよくわからない。主婦として家のこともやりながら、外の社会にも働きに出ることは強い意思と理想が必要だ。毎日働くってすごい。そして、やりたい仕事でお金を稼いでいる人は一握りだ。

これからやることを模索している期間は辛くさびしく、毎日悪夢を見ていた。働いて充実した生活を送る女性を夢見ていたのに、こうして何も成し遂げず、誰にも注目されることなくお家で死んでいくんだろうか。やっぱり、家の中にいる自分に満足できない。夫は言う。
「成し遂げてるよ。洗濯とか掃除とか」
家族は優しい。でもごめんね、この世界は厳しいから。私は弱いから。温かい言葉を受け入れられない。

好きな趣味や夢があるならその道に進めばいい。だけど私は、世間が何と言おうがこれをやるんだ!というこだわりや興味は持っていなかった。ものを書くのは好きで小説を書いてみようとした。書いてみたら、ダメだこれ。もっと人生経験積まないと。無職で書き続ける根性もない。働く動機ができた。

世の中に対して自分にも何かできることはあるんじゃないか

そのままでも周りは受け入れてくれているのに、何かしら社会と関わって仕事したいという気持ちは、自分のエゴとプライドかもしれない。一方で、また社会に出ることへの恐怖もあった。最終的には、何かしたいという気持ちが勝った。

夢中になる趣味もない私が、それなりに承認欲求を満たして生きるには、やっぱり仕事が必要だった。何らかの形で社会と関わることで、生きている実感を得られる気がする。
世の中に対して自分にも何かできることはあるんじゃないかなって。いや、そんな崇高なものじゃない。これは自分のエゴとプライドでしかない。次の仕事では、エゴだけではない仕事への思いを持てるように。自分探しはまだ続く。