私には3つ下の妹がいる。私が3歳の時、妹が生まれた。
当時の私は、父と母を独り占めしていたくて、「なんで生まれてきたの?」が口癖でいじわるなことばかり言っていた。

姉らしくない私。いつしか妹の大切な存在まで否定するようになった

ある時、親戚みんなでショッピングセンターに行った。初めて行く場所で気付いたら迷子になっていた。ふらふらと父や母を探していたら、同じく一人でいる妹を発見した。妹は私を見つけて「あーちゃん!」と安心したように近寄ってきた。しかし私は「付いて来ないで!」と妹を突き放した。

それに対して妹は「でも二人とも迷子なんだから、一緒にいた方がお父さんもお母さんも見つけやすいんじゃない?」と正論を言ってきたので、何も言い返せなくなり渋々一緒に親を探した。

私は本当に姉らしくない姉で、いつも妹と対等な立場にいた。「お姉ちゃんだから我慢しなさい」と言われた記憶もなく、常に傲慢な姉だったと思う。

その為か妹は中学2年生の頃からビジュアル系バンドを好きになった。好きになった理由を聞くと、“ある歌詞を聞いた時にすごく共感したから、自分の孤独感を分かってくれる気がした”と言っていた。

ビジュアル系バンドを好きになったあたりから、妹は反抗するようになった。なので、私や父や母はビジュアル系バンドが悪影響を与えていると決めつけてしまった。妹が辛いときに助けられた存在を否定した。

被害者は私だと思いこんでいた。でも実際は妹だって被害者なんだ

妹は友達の家に泊まりに行くと嘘をついて飛行機でビジュアル系バンドの遠征で東京に行ったり、未成年だった為、私の運転免許証を使いチャットレディをしたりしていた。その時は妹の行動はあり得ない!そんな家族がいる自分が可哀そうだ!恥ずかしい!と思っていた。いつも私は自分のことばっかりで被害者ぶっていた。

私が小学5年生の時、母の財布からお金がなくなる日が続いた。数日間で4万円程だったと思う。父や母は小学2年生の妹がお金を盗むわけがないと考え、私がお金が必要で盗んだのではないかと疑った。

友達にお金を持ってくるように言われたのではないかと私の友達まで悪く言われて、一番信用してほしい両親に疑われる。違うと言っているのに違う以外の答えは受け入れない感じでどうしたらいいのか分からず、悲しみの感情でいっぱいだった。

そんな日々が1週間程続いたある日、妹の友達がお母さんと共に家にやってきた。友達のお母さんは泣きながら頭を下げていた。話を聞くと、妹の友達が妹を唆し私の家に遊びに来た際に、母の財布からお金を盗んだようだった。

妹の友達は私の家だけでなく、他の家でも同じようなことをしていたらしい。私の母や父は、小学2年生の子がそんな大金を盗むのかと驚きを隠せずにいたが、私はその真実が明らかになった瞬間、自分の容疑が晴れた喜びと、もう疑われなくてもいいんだという喜び、今まで辛かった悲しみ等色々な感情が入り混って号泣した。

盗んだお金は妹と妹の友達でゲームセンターで使い果たしていた。

私はこの一件から妹のことをとんでもない人だと決めつけて、常にトゲのある言動をしてしまっていたように思う。私の心の中は妹のせいで私が疑われたという思いでいっぱいで、両親に「妹が悪いんじゃなくて疑ってしまった私たちが悪い」と言われても、“妹がそんなことをしなければ、私はこんなに辛い思いをしなくて済んだのに!”という感情のみだった。

今なら妹の立場になって考えられる。妹は何も分からず、友達に母の財布からお金を盗もうと誘われ無知から自分の考えもなく誘いに乗り、そのことが大ごとになっても何もできずに一人で悩んでいた気がする。妹も被害者だった。
だが、当時の私はそれが理解出来ず、この一件から妹に偏見を持ち、無意識にも常に妹を否定していた。

歳を重ねるごとに悪くなる関係。それでも私たちは姉妹だ

妹の反抗は中2から落ち着かず、私と妹の関係は常にピリついていた。一緒の家に住んでいるのに、すれ違うだけでお互いに舌打ちをするような関係になってしまった。
そしてもう一つ、私が無意識に妹に冷たく当たっていた理由がある。
私は遺伝的に目が悪く、小学1年生から眼鏡を持っていた。周りの友達は誰も眼鏡をかけていないので、眼鏡をかけることが恥ずかしくてコンプレックスに感じていた。

この時期、私は何かと妹と比べられるようになった。親戚や周りの人からいつも「妹、可愛いね」「お姉ちゃんとは全然似ていないね」と言われ、可愛い妹と似てないということは間接的に私はブスだと言われていると思い、すっかり自信を無くすとともに可愛くて純粋な妹に対して羨ましい気持ちから妬みになっていたのだと思う。だから、冷たく当たってしまった。

それでも妹は優しく、妹に助けられたことも多々あった。
例えば、私が専門学校の学校祭に行きたかったが行く友達がいなくて悲しんでいるときに、一緒に行ってくれた。妹が一緒に学校祭に行ってくれたおかげで、前から友達になりたかった人と友達になれ、すごく素敵な時間を過ごすことができた。

また、就職活動の際に、私が行きたい会社から内定を貰えなかったらどうしようと不安がって「一年後何しているんだろ~」と言っていると、「一年後は行きたい会社から内定もらえて働いているよ~」と根拠もないのに心強く言ってくれた言葉にすごく助けられた。

過去に戻れないのが人生。それでも戻ってやり直したいと思うことがある

妹は社会人になると、すぐに家を出た。過去のことを何度も謝ったが、いくら謝っても足りないくらいひどいことをしてしまったと思っている。もし、私に恨み妬みが一切なく普通に妹に接することができていたら今頃は仲の良い姉妹になれていたのかなと思うと、切実に過去に戻ってやり直したい。

でも、過去に戻れないのが人生なので、自分のしてしまったことをしっかり受け止めつつ、今できる最大限で妹に接していきたいと思っている。
妹は家族があまり好きではないので、滅多に連絡は取らないが、妹の幸せをいつも願っている。

「辛くてどうしようもない時はいつでも頼ってね。そして毎年、誕生日におめでとうってメッセージをくれてありがとう。そして今だに私のことを“あーちゃん”と呼んでくれるのがすごく可愛くて嬉しいです。」