高校の頃、2年連続で同じ場所で同じ時期に告白されたことがある。
いつも、部活が終わった18時過ぎの少し薄暗い時間。
体育館の近くの人気のない廊下だった。

最後の大会を控えた3年生の先輩からの告白は今でも鮮明に思い出せる

2人とも最後の大会を控えた3年生の先輩だった。
大会が始まる前に、伝えておきたいと。
部活終わりの、汗と制汗剤の匂い。
夏前の湿気がちょっとだけ和らいで、涼しくなった夕方の空気。
今でも鮮明に思い出せる。

私は中学まで部活でバスケをやっていて、高校からは女子バスケ部のマネージャーをしていた。
だから、最後の大会前の気持ちはよくわかる。
わかるからこそ、困った。
私の返事次第で、大会へのモチベーションが変わるんじゃないか?
返事を先延ばしにしたら期待させてしまうだろうか?
どんな風に返事するかは迷っていたが、返事の内容は決まっていた。
ごめんなさい、だ。

高校1年生の時に告白してくれたのは、男子バスケ部の3年生の先輩だった。
強豪だった男子バスケ部で、ベンチ入りはしていたものの、ほとんど試合には出場しない。正直、顔もタイプではない。
ただ、すごく優しくて面白い、愛されキャラのムードメーカーだった。
その人がいるといつも笑いが絶えなくて、私も入部したてで緊張していたころに気さくに声をかけてくれ、救われたのを覚えている。

大会前に先輩から呼び出し。なんて言われるのかは想像ついた

男子バスケ部と女子バスケ部は同じコートを半分にわって練習していたため、毎日顔を合わせていた。
男女混合でのメニューもあり、マネージャーである私は男女かかわらず声かけをしていた。
練習の前後ももちろん同じ空間にいることが多い。
自然と挨拶や会話も増え、その先輩から声をかけられることも増えた。
私がその先輩にとっての「推しメン」のような存在であることは、なんとなくバスケ部の周知の事実となった。
そんな人からの、大会前の呼び出し。
なんて言われるかの想像はついた。

純粋に尊敬する、素敵な先輩だ。
もちろん練習も手を抜かないし、部員みんなに気を遣える人だった。
そんな人に想ってもらえて、嬉しかった。
でも、好きじゃない。
私はその時、他に気になる人がいたのだった。

真っ直ぐな告白をその場で断ったけれど、苦しくて泣いてしまった

実際、告白されてその場で「ごめんなさい」と断ったのだけれど、私はそのあと女子更衣室で泣いてしまった。
断った時の、傷ついた表情。
多分、私がどう返事するかはわかっていたのだと思う。
それでも伝えたいと、告白してくれたのだと思う。
その気持ちを思うと申し訳なくて、応えられないのが悲しくて、泣いてしまった。

まっすぐな告白は、断るのも苦しい。
甘酸っぱくてほろ苦い、ふった話。

ちなみに、高校2年生の時の大会前に告白してくれたのは別の運動部のキャプテンで、ちょっとチャラい先輩だった。
「返事は大会が終わってから聞かせて」と言われたので結果の報告を待っていたら、先輩の部は、県大会で優勝していた。
さすがだなと思った。かっこいいと思った。
だけど断った。好きじゃなかったから。

この先輩は、夏の終わりには私の友達に告白していた。
これはこれで、いい思い出だ。笑