マッチングアプリでの出会い。会うつもりはなかった
ふられた理由、そんなものは未だにわからないまま。
私にはたった1ヶ月だけ付き合った人がいた。優しくてよく笑う目が綺麗な人だった。
出会いはよくある出会い系アプリで、ただの暇つぶしで会話していた。
好きな映画の話、音楽の話。
会うつもりなんて更々なかったのに、話しているうちに彼にだけは会いたくなってしまった。
ある日私が友達にドタキャンされた時に彼を映画に誘ってみた。
すると「用事終わったらいいよ」という返事。待ち合わせは映画館となった。
彼を映画館のチケット売り場で待っていた。
「どこにいるの?」と聞くと、「横にいるよ」という文字、横を見ると人がいて、少し見上げると彼がいた。
優しそうな人で柔軟剤の優しい香りがした。
それにとてもほっとしてなぜか思わず笑ってしまったのを覚えている。
映画の席が満席で次の上映まで待つことにした。その間にご飯を食べることになった。
コロナの時代でマスクをしていたものだから外すのに緊張したことを覚えている。
他愛ない会話をして、ご飯を食べた後は本屋にも行って、彼の好きな作家を紹介されたり、少し休憩しようと近くにあった外の見える椅子に横に並んで座って恋愛の話も少しした。
お互い恋愛する気がない話なんてして、この時もまだ好きにはなってなかったと今では思う。ただ話していてとても落ち着く人だった。
映画を見終わったあとも帰るギリギリまで話して、また遊ぼうと約束した。この時もまだ好きじゃなかったと思う。
2回目また遊んだ。お互いたまたま休みで暇だねなんて会話から遊ぼうと私から言って遊んだ。ただ公園で話しをした。
自分の話がいつの間にか止まらなくなってしまう程彼に心を開いていた。
この時の彼の私の話をしっかり聞いてくれる姿を見て私は好きになってしまったのではないかと思う。明日は仕事だからとギリギリまで話してここでもまた健全に解散。出会い系アプリもバカにしたものじゃないと、この時確信した。
彼を家に誘った、気持ちは決まっていた
3回目、彼を映画を見ようと家に誘った。よくある出会い系アプリで言えば家に映画を見ようと誘うのはテッパンのヤリモクの手口だが、私の中での「それ」はほんとに映画を見ようということだったし、きっと彼もそうだったと思う。
映画を見て、少しお酒を飲んで、いざ寝ようとなったら彼は床で寝るねと一言。
やるつもりも1ミリもなかった訳で、床で彼を寝せるのは可哀想だと思い、「別に一緒のベッドでいいよ」と彼をベッドに誘った。
この「誘った」は別に深い意味はない。
はずだったのに、いざ横に彼がいるとドキドキが止まらなかった。
全く動かない彼。
普通ならこれは男の立場だと思うが、自分の中でもう気持ちに気づいてしまっていた。
彼にキスしてしまった自分がいた。彼の驚いた顔が暗闇でもわかった。
もう口から「付き合おう」という言葉は漏れてしまっていた。我ながらよく言えたもんだと今でも思う。
この時の記憶が半分夢の中だったからなのか彼の言ったこともあまり覚えていない。
ただ「いいよ」という彼のセリフだけは覚えていて、付き合うことになった。
その後も普通に、ただ普通に水族館に行ったりショッピングモールに一緒に行ったり、ただ普通に付き合っていた。彼の体にも触れたし、彼も私に触れた。一緒にお風呂だって1度だけ入った。
手紙をポストに残し、突然消えた彼
毎日が幸せだった。でも1ヶ月と少したった時、彼はなにかずっと悩んでいるようだった。彼はあと何カ月かで東京に行ってしまう。
それもわかっていてお互い付き合うことになっていた。
1度だけ彼から「君を嫌いになった訳じゃない、ただ君には幸せになってほしいんだ」というメッセージがきたことがあった。
こんなの今思えばなんて無責任で思いやりのない言葉だろうと思う。
今でも忘れない、11月3日、彼は手紙をポストに入れたまま消えた。
その前の日に、私の家に来て泊まった。いつもの彼とはなんか少し違っててなんだか疲れているような感じだった。朝になっていつもの様にキスをしてそのまま消えた。
LINEには「会えてよかった、大好きだよ」というメッセージ、これが最後の文だった。
彼との別れがきっかけで、夢を追う決意ができた
この文章の中には表せられない今までの彼の言動や行動、2人の間であった会話、それら全てを載せたいが足りない。
その時の感情さえも残したいが残せない。
彼がどうして消えたのかそれさえ今もわからないまま。
ただ彼がいなくなったことはなにかのきっかけだったんだ、と思えるようになるほど時間がたった。
私は女優になる夢がずっとあったが人生をかけてまでやろうという決意がなかった。
でも彼がいなくなったことで、前から今の仕事を続けるか迷っていた自分に終止符を打つことができて、夢を追う決意ができた。
きっと彼と出会ったことは、「きっかけ」だったんだと思う。
だからここで私が彼にふられた理由を自分で決めようと思う。
それは「人生かけて夢を追う道に進むためのきっかけだったから」
P.S.どこかで笑って息しててくれ、ありがとう。