「あんなの、俺でもふってもらったって分かるよ」
別れて何ヶ月かして、急に連絡をよこしてきたあなたはそう言った。

別れた彼から電話が着て、私が最初に思ったことは「勝った」だった

夜、遅い時間だった。
約束を2時間くらい過ぎてから、電話をよこしてきた。翌日は一限から授業だったし、何度も寝ようと思ったが、なんとなく待った。なんとなく待って出た電話で、くどくど話される。

単に懐かしんで電話をかけてきた訳でもなさそうだったので、大筋は分かっていた。だから、前置きがうざったくて「これは寄りを戻したいという話なのかな」と言うと、反射で「違う」とか言っておきながら「もう一度、出会い直してくれませんか」なんて言い出す。

「元に戻るんじゃなくて、一から、やり直してくれませんか」
私は、はっきりときっぱりと、断った。
連絡がきた時から決めていた。こういう流れになったら、意地でも断るぞって。だって、あなたからからのLINEの通知を見て、最初に「勝った」と思ったから。

嬉しいとか、淡い期待とか、ない訳じゃなかったけど、全部どうでもよかった。苦しくても走り続けて、あなたを忘れるために毎日必死だった。自分から連絡することだけはしないぞと決めて、あなたに繋がる方法はすべて消去した。

あとね、私あなたと別れてから、大嫌いな自分のこと大好きになろうと思ったの。今もまだまだ、自分を好きになんてなれてはいないのだけど。あなたといると、いつまでも私は私のことが好きになれないことを私は知っていた。だから、今度こそ本当に、私からふったの。

適当で不機嫌に振る舞われるのが悲しかった。でも、好きだった

あなた曰く「ふってもらった」というときだって、ちゃんと自分からふったつもりだったんだよ。もうろくに話もしてもらえない状況で、一方的に別れを告げた。私がずっと泣くから、前を向けないから、これ以上一緒にいてはお互いの為じゃないと思ったの。

私が悪いって知っていた。もはやただのメンヘラだったと思う。そこは素直に、ほんとにごめんなさいって今でも思う。これが、私のふられた理由。

でもね、そうさせたのはあなたにも要因があるって、気付いてから電話してきて欲しかった。私ほど優しい人はいないだとか、今度こそ大切にするとか、そんな言葉じゃなくて。俺の何がダメだったの。なんでダメなの。…ほんとに全部答えていいの?

じゃあね、曖昧な関係のまま周囲には「俺の彼女だ」と言いふらし、唇も奪われた男に「付き合おうなんていつ言った?申し訳ないけどキープ」なんて面と向かって言われて、傷つかない女いると思う?

自分が甘えたいときは散々甘えて、私が甘えたいときは「依存せんとって」だの、自分の趣味には連れ回すくせに。おまけに、私が行きたいところを言うと「勝手に行け」だの。

適当に相手されて、不機嫌に振る舞われるのが悲しかった。でも、好きだった。好きでいたかった。最初の頃みたいに、塞ぎ込んでいた私を助けてくれたときみたいに、また大事にしてくれる日を願った。

誕生日プレゼントに文句言われた挙句、包装紙などのゴミとなるものを持って帰らされた日には号泣しながら家に帰った。…ねえ、「俺の何がダメだった?」って、よく聞けたね。

自分を押し殺してまで「頑張る恋愛」は、楽しくないって知れたから

全部飲み込んだ言葉たち。自分で考えろと突き放した。言う勇気がなかっただけだけど。それに、もう会わないと決めた人の為に言葉を発してあげる優しさなんて、持ち合わせていなかったの。そこまで言っちゃうとタダの文句だしね。

結局なんであなたをふったって、自分のことを好きでいられる自分でいたかったからに尽きるの。だって、「自分が悪い」「自分のせいだ」「あなたの好きな私にならなきゃ」「嫌われたくない」なんて思いに埋め尽くされた毎日なんて、楽しくないじゃない。

初めての恋が、こんなでよかった。

「好き」は自分を押し殺してまで頑張るもんじゃないって知れたから。