ヲタクに偏見を持っていた自分へ「アニメを見ないなんて勿体ない!」

偏見を持つほとんどの人は、特定の物事に対する自分の捉え方に“偏見”があることに気付かない。そして、よく分からない、知らないことに対してそのような偏見を抱きやすい。
私も自分がそんな偏見を持っていたんだと、気付かされることが今でもよくある。
私はいつからか「アニメ」と聞くと、ヲタクの人たちのものといった先入観を持っていた。アキバ系とか電車男などといったメディアによって、印象付けされたそのままのイメージだった。
おどおどしていて、チェックのシャツをハイウエストのデニムにイン。頭に付けたバンダナがトレードマーク。普段は、極めて消極的で対人間だと無口なのに、好きなアニメやキャラクターについて語るときは恐ろしく饒舌になる。正直ちょっと怖くて近寄りがたい存在、私には縁がない世界の住人たちと決め付けていた。もちろん中にはそういう人もいるかも知れないけれど、“ヲタク”は漏れなく全員そういうものだと思い込んでいた。
けれど、そんな私は今では多分、きっとアニメヲタクだ。20歳のとき、今から8年前にアニメ『進撃の巨人』に出会ってから、私の楽しみのひとつは物語や登場人物の気持ちを考察することだ。見れば見るほどに衝撃を受けるし、もはやただの娯楽ではないとさえ思っている。『進撃の巨人』の物語については、見た者それぞれに違った捉え方、価値観、道徳的観点があると思う。
ひとつの事実に対していくつもの真実があるから、容易に誰かを責めることが出来ない。タイトルからして『巨人』が出てくるだけで非現実的なはずなのに、不思議と現実をつきつけられたような錯覚に陥る。今世界で起こっている紛争・テロなどの悲劇が、繰り返される原理を見せつけられている気にもなる。憎しみは、新しい憎しみを産む。終わりのない争い。アニメから学ぶことがこんなにあるなんて知らなかった。
ストーリーもさることながら、私がここまでどっぷりハマってしまった大きな要因のひとつは「リヴァイ兵士長」の存在が大きい。進撃の女性ファンなら(男性でも)誰もが頷くことだろう。リヴァイは、物語の中で「人類最強の兵士」の異名を持ち、幾度となく仲間の命を救う最強の男。
私は「絶対王者」とか「人類最強」等の類のトップ・オブ・ザ・トップの肩書きに弱いということは自負している。けれど、リヴァイは強いだけではなく、とてつもなく母性本能をくすぐる天才で、目つきも口も悪いけれど意外と可愛いのだ。やたら潔癖症で、掃除の時間には必ず頭巾とマスクを着けるところとか、時折言葉遣いが可愛いとこ、部下思いなとこ、言い出したらキリがないしリヴァイについてなら多分、いや確実に8時間は語れる。不謹慎だけど、壮絶で可哀そうな幼少期を持つところも超萌える。
「最強」と聞くとムキムキで高身長なイメージだったけど、リヴァイは違う。他の男性キャラクターの平均身長が180~190㎝程なのに対して、リヴァイはなんと160㎝。私より低い!
そして、アニメでリヴァイの声を演じる神谷浩史さんの声が、“イケボ”すぎる。ぶっきらぼうなキャラクターにピッタリすぎるくらいハマっている。人類最強の悪人面のドSのチビ。とんでもないギャップだけれど、やっぱり女子はギャップに弱い。
理想の男性像を聞かれて「リヴァイ兵長です」なんて馬鹿正直に言ってしまった暁には、“理想エベレスト”のレッテルを貼られること間違いなしな気もするし、当然現実世界にリヴァイのような人はいないと分かってはいる。
肩書だけで挙げるなら、フィギュアスケーターの羽生結弦選手や総合格闘技界において、かつて“人類最強の男”と呼ばれたエメリヤーエンコ・ヒョードル辺りにヒットするのだろうけれど、まず分母が小さすぎるし、彼らの才能を以てしてもリヴァイには叶わないだろう。そもそも命をかけて、人類を救うという大義を持った人が果たしているだろうか。もう進撃を見て、リヴァイのファンになってしまうのは仕方のないことだと思う。
こんな話を友人にすると「あんたもう立派なヲタクや」なんて言われて、ちょっと嬉しかった。
少し前までは、あんなに嫌悪していたのに。『進撃の巨人』について語る私は、客観的に見てかなり情熱的になっているかもしれない。新しいおもちゃを買ってもらったときの子供のように、目をキラキラ輝かせながら熱弁してるように映るかもしれない。
もし、偏見を持ったまま何も知らないまま生きていたら、こんなに面白いものに出会えなかった。そんな勿体ないことにならないように、これからはいろんな事・人に対して「もしかしたらこれって私の偏見かも」と自分に問いかけてみようと思う。
そして『進撃の一味』として、出来ればクールに語ってもっとヲタクの輪が広がっていけばいいと思う。
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