彼氏に振られてから、2週間になる。付き合っていた期間は長くはなかったけど、振られた日はかなり泣いた。だけどなんとなく納得もしていた。

自然と「この人が彼氏なら」と考えるようになった

彼とはマッチングアプリで出会った。私自身そういう出会い方をすることに良い印象がなかったし怖かったけど、19歳の秋、恋人がいないまま大人になっていくのは嫌だった。友達に馴れ初めを聞かれた時は、「共通の友達がいて」と説明していた。
元々すぐにやめるつもりだった。彼はたまたま近いところに住んでいて、たまたまお互い大学生で、たまたま2人ともサッカーが好きだったから最後に話してみることにした人だった。

仲良くなるのに時間はかからなかった。最初に会った時はもちろん不安だったけど、会話の中からそのまま出てきたように感じるぐらいイメージ通りの人で安心した。何度か会ったり電話したりするうちに、自然と「この人が彼氏なら」と考えるようになった。電話するたびにお互いの理想の恋愛を語った。「彼女とは毎日LINEしたいな」「彼女ができたら多分投稿しまくって自慢すると思う」そう言っていた彼が告白をしてくれて付き合ったのは、冬の初めだった。

思い出が増える一方で、LINEの返事は遅くなっていった

付き合ってから、毎週のように会った。コロナ禍なのでほとんどおうちデートだった。対面授業が始まっていた私が学校終わりに、オンライン授業でずっと家にいた彼の家に行くのがお決まりの流れになっていた。
クリスマスにはイルミネーションを見たりプレゼント交換をしたりした。家でゴロゴロしてそのまま朝を迎えたこともある。年明けには一緒にプチ旅行にも行った。公園にサッカーをしにも行った。フィルムカメラが趣味になりつつあったので、どの日もたくさん写真を撮った。正直最初は彼のことを心から好きだったわけではなかったと思う。それでも、少しずつ思い出が増えるのはとても嬉しくてワクワクした。

思い出が増える一方で、LINEの返事は遅くなっていった。普段の彼に戻っただけなのかもしれないと思いながらも、不安は募った。最初はたくさん言ってくれた「かわいい」もほとんど言われなくなった。私が写っている投稿も見たことは無かった。デートもいつの間にか自分からしか誘っていなかった。いつかのデートで私が「きついなら毎日LINEしなくていいよ」というと、「LINEってめんどくさいよね~」と返ってきた。それが少し寂しくて、欲張って「投稿しないのはなんで?」と聞いてしまった。「別に普段から投稿あんまりしないタイプだからね~」と返ってきた。これが慣れなのか、冷めなのか、私には分からなかった。知らないふりをしてただ連絡を待つことにした。

別れる意思はきっと変えない癖に、私に嫌われたくないんだ

再び私もオンライン授業になった頃、彼が久しぶりに会う予定を立ててくれた。空きコマに近所に昼食を食べに行くだけだったけど誘ってくれたことがとても嬉しくて、誘ってくれた瞬間から着ていく服やメイクを考え始めた。

当日、会った瞬間に少し気まずい空気を感じた。私は気づかないふりをして、普段のように話を始めた。昼食を食べ終わった後の帰り道、親しい友達機能でSNSに彼との写真を載せようとした。彼は載せないけど、私がたまに彼を載せるのを止めたことはなかった。だけど、初めて「ちょっと載せるの待ってほしい」と言われた。確実に振られるのが分かった瞬間だった。案の定別れてほしいと言われた。思い出がこれ以上増える前に言おうと思ったと。理由は、あまり好きじゃなくなったからだそうだ。間髪入れずに彼は、「嫌いになったわけではないし、君が悪いところは1つもない」と続けた。そして、何度も謝られた。

その変な優しさがとても痛かった。私が何を言っても別れる意思はきっと変えない癖に、私に嫌われたくないんだ。私は「しょうがないよね、分かった」としか言えなかった。泣きついて未練がましい女だと思われるのは嫌だったから。あっさり別れて後から寂しくなればいいのにという、咄嗟にしたせめてもの反抗だった。きっと寂しくなんかならないんだろうけど。

「話したいなら話すし、ご飯ぐらいなら行くし。友達に戻ろう」と言われた。そもそも友達だった期間なんてほとんどなかったのに。話すこともご飯に行くこともないだろうと思いながら頷いた。
最後にハグだけしてから別れたけど、私のことをもう好きじゃない人に抱きしめてもらったんだと思った時、我慢していた涙が溢れた。
振られるために服を選んで朝から化粧をしたと思ったらとても悔しかった。私だけが涙をこらえていたのも悔しかった。そして何より、彼への酷い悪口が思いつかないのが1番悔しい。

2週間経った今、まだ彼のことが好きだ

私がマッチングアプリを再び入れることはもうないだろうけど、彼との出会い方には後悔していない。もし彼が最初から私に対して本気じゃなかったとしても、別にいいと思った。そう思うぐらいには、彼のことを好きになっていた。

2週間経った今、まだ彼のことが好きだ。たくさん撮って現像した写真は1枚も捨てられていない。彼を貶すような悪口もまだ見つかっていない。