いわゆるコロナ別れだった。

彼とは高校3年の6月から、4年4ヶ月付き合った。お互い大学へ進学したから、福井と広島の遠距離恋愛だったけれど、上手くやっていたと思う。
「おやすみ」の4文字だけは、お互い毎日欠かさず、2、3ヶ月に一度会う時は、数日間一緒に居た。強いて言えば、それが上手くやれた理由だと思う。それを目標に、勉強もバイトも頑張れたし、没頭すれば寂しさは紛れた。

彼の事は本当に好きだった。私に自信を与えてくれるから。彼の温厚な性格も、控えめで優しい所も、良いなとは思っていたけれど、好きになる要因ではなかった。
いつでもどんな私でも肯定してくれるから、彼と居ると自分に自信が持てた。それが彼と付き合う理由だった。だから私も、彼を否定するような事はしなかった。ちゃんと聞いた事はないけれど、きっと彼も、同じ理由で付き合っていた。

付き合って3年目になると、将来の話もした。彼との関係性は安定していて、この先もずっと一緒なんだろうと、誰もがと思っていた。周りも、彼も、私も。

でも、付き合って4年目になる頃、コロナウイルスが流行した。その影響で、彼とは全く会えなかった。
それに加え、私の就職活動が始まった。コロナになって、仕事やキャリアに対する価値観が、世間で変わりつつある。それは私も同じで、今までの価値観やキャリアプランについて、考え直していた。
だけど「彼との将来について」は、今までと変わらず、ついて回ってきた。そんな自分の思考に、少し嫌気がさす時もあった。

「ついて来るよね」彼の言葉に抱いた違和感。離れる未来しか見えない

そんなある時、彼から言われた。
「大学院を卒業したら、都会へ出て行きたいと思ってる。ついて来るよね。」

私の中に、小さな違和感が生まれた瞬間だった。1年前の私なら、喜んでいただろうな。なのに今は、どんどん疑問が湧いてくる。私にだってやりたい事があるし、居たい場所があるのに。なんで女がついて行かなきゃならないんだろう。

遠距離を終わらせて、彼とずっと一緒に居たい想いもある。でも、私だって私の道に進みたい。板挟みで、苦しかった。コロナで彼と会えない半年の間、悩み続けた。
遠距離恋愛は、終わりが見えると上手くいくルールだと思っていた。ゴールに向かって、2人で進むだけだから。でもそれは違った。将来が具体的になればなるほど、2人が離れていく未来しか見えなくなった。

結局私は、電話で彼に別れを告げた。最後の半年は、連絡の頻度もだいぶ減っていた。久しぶりの電話だったけれど、明るい話題はなく、お互い泣いていた。
でも不思議と、解放されたように、心が軽くなるのが分かった。今まで私を支配していた、漠然とした寂しさは、もうなかった。
別れる辛さより、遠距離に耐える辛さの方が、しんどかったから。付き合っていた事が、心の負担になっていたなんて、初めて気付いた。

コロナがなければ自分と深く向き合っていなかった。後悔はない

コロナがなかったら、今頃どうなっていたんだろうと、思う時がある。大学生活は乱される事なく、彼との関係はそれなりに順調で、自分自身とそこまで深く向き合っていなかったかもしれない。
コロナのせいで、コロナのおかげで、私はとことん自分と向き合った。そうして出た答えが、「今」だ。なるようになるし、なるようにしかならない。だから「今」を受け入れようと思う。私は、彼と付き合った事を後悔しないし、別れた事も後悔しない。
何より彼は、誰かを深く知る事の尊さや、無償の愛がある事を、教えてくれた。私の中に居た、知らない私とも出会わせてくれた。彼との4年4ヶ月は、私を成長させ、かけがえのないものとなった。

彼と別れて、「このまま私、独り身なのかなあ」なんて考えたりもするけれど、独りってすごく楽しい。コロナ収束の目処は立たないし、暗いニュースが多いけれど、私は私の道を、後悔せずに進もうと思う。彼には感謝してもし切れない。今はただ、彼の幸せを願っている。