ふったから終わり。ふられたから終わり。
大切な2人の関係は、ふったふられたで終わりになるのだろうか。

仕事も生活ものらりくらりとこなす彼を見て、羨ましく思った

今から5年程前、私は社会人となり仕事に奮闘していた。恋する余裕もなく、仕事に追われていた。気分転換に休日のわずかな時間にネットゲームをしていると、1人の男性から声をかけられた。それから毎週末少しずつ会話を重ねていった。すると住んでるところが近いことが発覚、男性のアプローチにより会うことになった。これも気分転換、友達としては穏やかでいいと思ったため、週末に会ってみることにした。

イケメンなわけでもスタイルがいいわけでもない男性だった。仕事も生活ものらりくらりとなんとなくこなす、かなりマイペースな人だった。
そんな男性を見て羨ましく思った。
私は人間関係や過去にとらわれ、今の仕事に追われ、自由のない中で懸命にもがいて生活している。それでも生きていく中で価値を見出そうと試行錯誤する毎日。でも、目の前にいる男性は、苦労のくの字もないような生活を送っていた。

あっさりとふった後、彼はそれでも毎日私を迎えにきた

初めて会った時から数日後、職場の場所を聞かれた。別に教えても差し支えなさそうだったので、最寄りの駅を伝えた。するとその男性は私の仕事終わりを見計らって職場近くの駅まで私を迎えにくるようになった。
さらにその数日後、私は夜に呼び出され、車の中でこう言われた。
「俺と付き合ってほしい」
突然の言葉に驚いたが、私はあっさりと返した。
「付き合わない」
戸惑いを見せる男性に私は理由も付け加えた。
「魅力がないから付き合わない」

少し仕事終わりに迎えに来るからって、外見や内面に惹かれるところは何もなかった。私のふった理由は「魅力がない」そんな言葉で片付けられるようなものだった。
私の言葉に動揺したのか、しばらく黙り込んでいた。わずかに肩を震わせているようにも見えた。そして小さな声でポツリと言った。
「絶対に振り向かせてみせる…」
なんの根拠があってそんなこと言えるのかと思ったが、「はいはい…」と軽く受け流し私はその場から立ち去った。

しかし、私はこの出来事の1年後、この男性と付き合うことを決めた。迷う躊躇もなくふった相手と付き合うことは不思議だった。でも、あの時は感じられなかった魅力が彼にあった。「魅力がない」と辛辣な言葉を投げかけたにも関わらず、彼は1度も私を諦めなかったことだ。
あっさりとふった後、彼はそれでも毎日のように私を迎えにきた。仕事で2、3時間遅くなっても彼は私を待ち続けていた。疲れ切っている私を見て、アイマスクを用意してくれたり、甘いお菓子を用意してくれたり、尽くしてくれた。ただ、家まで送り届ける数十分のためだけに、飽きもせず1年私のことを追い続けてくれた。

私と彼は、ふったからつながり、ふられたから燃えた

魅力を感じられなかったからふった彼。
そんな彼の諦めない精神が私の心を突き動かした。今までの友人や付き合ってきた方に裏切られ、信じられなくなったことが幾度もあった。でも、彼は付き合ってもない。それどころか、魅力がないと言い放ったのに諦めずに私を想い、追い続けた。
「絶対に振り向かせてみせる」。彼が小さな声で言った言葉は現実となった。魅力がないとバッサリふったことは、正直言い過ぎた、申し訳ないことを言った、と思っている。でも、魅力がないとバッサリふったことで、もしかしたら彼の魂に火をつけたのかもしれない。

ふったから終わり。ふられたから終わり。
そう感じる人が多いと思う。でも、私と彼の関係はふったからつながり、ふられたから燃えた。
ふったこと、ふられたことで、私たちの未来が始まった。
人それぞれふった理由、ふられた理由があると思う。でも、その経験は、きっとひとつも無駄ではなく、これから先の未来につながる大切な出来事だと私は考える。
ふったこと、ふられたことを誇れるくらい、相手や自分のことを考え、前へ進めばいいと私は言いたい。