高校生のくせに、お酒やらタバコやらに手を出してイキっている奴が、嫌いだ。
人は環境で、簡単に変わってしまう。7年越しに叶った恋なのに、長年好きだった人なのに、彼も例外ではなかった。
なのに、私はふられた、ふったんじゃなくて。まじで? あれから、もう1年が経とうとしているのか。私の絵は、彩度を失っている。
付き合っていたけど、私たちの心は違うところに関心が向いていた
高校3年生、受験も終わった頃、彼の浮ついてきている感じが嫌だった。とがめたこともあったけど、軽い冗談だと思われていたみたいだ。私との約束は少なく、男子友達と遊んでいて、クラブにも行っていた。
実際、馬鹿なのだと思う。イキりというのは、通過儀礼か? と思うほどに周りの人に訪れている、、参加しない人もいるけど。若いというある種のステータスをかざしまくり、虚勢を張ってみる。そんなに意気がって生きている実感を感じているつもりか? そうしないと不安なんだろうか? とつい思ってしまう。
そんな調子で会う頻度も少なく、お互いの心は違うところに関心が向きつつあっただろう。
その割には、卒業後旅行も行ったし(何もなかったけど。旅行まで行って何もないことある? のちに後悔した、繋ぎ止めるものを残せなかったようで)、これから二人の関係性が良くなっていくことを待つしかないかなぁと思っていた。
その後、久しぶりに連絡をとってカラオケに行くことが決まった。いつもなら同じブロックの椅子に腰掛けるけど、ちょっと距離遠いなと思いながら、そんなことはさらっと流れて思い思いに歌い出す。退出時間が迫ったころ「実は大事な話があんだよね」と彼が言い出した。ちょっと構えたけど、何かなーとか思ってた私。
「あのさ、言いづらいんだけど、好きな人できたかもしんない」
「…(唖然の顔)」この間レイコンマ8秒。
「でも、別れるのいやだよね?」
「えっ全然(全然?)。他に好きな人いるのに付き合えないでしょ。いいよ、別れよう」
「そっか、そうだよね、ごめん、ありがとう」
カラオケのレジ、小中同じの子だったし、絶対付き合ってるんだなぁって思われたけど47秒前に別れたし、ちょっとニヤけた顔されても、それ向けどころ間違ってるから!
カラオケの前で最後の会話。わけわかんなくて、早く一人になりたかったかも。「本当にごめんね。聞いてくれてありがとう、なんかあったら相談してね。や、そんなことないか」と彼が言った。「ああ、うん、頑張ってね、じゃあ」と私は言った。
彼と別れてからのことはあまり覚えていないけど、私の顔は濡れていた
一瞬で終わった。マジで実感なくて。ついこの前会った時までそんなの素振りなかったやん! え、てか「別れるのいやだよね?」って何? いやいや、私も「えっ全然。他に好きな人いるのに付き合えないでしょ」って、そうなんだけど、全身の反射神経が全集中して知らないうちに「全然」って、言ってた…。でも、受け入れられなすぎて、びっくりしちゃって、びっくりの感情しかない。びっくり!!
ただ、私をふっちゃって大丈夫?! 絶対後悔しかしないよ?! という自尊心が保たれているところ、私のいいところである。
周りの景色や情報何も入ってこないまま、多分日が落ちてきてて綺麗な青に包まれてた気がするけど、それすらふわふわしていて、全部実体のないように感じられる帰り道を、歩いた。
咀嚼しきれない感情を抱えて、親友に電話した。
「あのね、なんかふられた、好きな人できたらしい」
「えっ大丈夫?今どこ?、泣いてる?笑ってるの?」
私、どんな喋り方してたんだ。泣いてるのか笑ってるのか聞かれて、初めて自分の顔が濡れていることに気が付いた。とりあえず、その日は早めに寝た、あとはあんまり覚えてない。
次の日、見たことのない表情を描いた。私は普段から絵を描いている、心情に目を向けた絵。描いたときの感情とかそういうのが、絵には全部出てしまう、何一つも隠せない。見たことのない表情が描けた。普段使わない黒を使っていた。一部分の感情が昇華されてしまったという切なさもありつつ、やはりスッキリするものがある。
彼にふられてむかつく。でも、私は彼のことが好きだ。悔しいけど
包み込んでくれる人がいないのつらいなぁ。好きって思うことで、満たされるものはあって、好きって思える人が存在することで、救われることって沢山ある。好きな人と会った後の、自分の顔が忘れられない。あんなに嬉しそうで幸せそうな、輝いたニヤけができるんだな。好きってああいうことじゃないのかと、何ヶ月経っても思う自分がいる。そして、どこかでまだ、縁のあることを信じている私がいる。
数ヶ月経って、いっとき私が貸した読みかけの本の「著者なんだっけ」と彼からLINEが来た。「宮下奈都だよ」と返した。話の流れで、彼のその好きな人には彼氏ができて、結局その人とはうまくいかなかったと知った。
私は馬鹿なので、清いな、と思った。結構多くの人が、キープするということをやりがちだと思う。私に「好きな人ができたかも」と打ち明けておいて、その人とうまくいくくらい距離が縮まってなかったなんて。清いじゃないか。最後までむかつく。でも、そういうところも好きだ。
悔しいけど、私は多分ずっと彼のことが好きだ。負けた。初めは7年という時に固執してるとか、その間に作り上げた理想、幻想に恋してるとか思ってたけど、いずれにしても彼が私の心にいるのは変わりなくて、初めから骨抜きにされてる。ぴえん。
この文を書いて、スッキリしてやろうとか、キッパリ忘れてやろうとかそんなつもりはない。けど、好きだと再認識するつもりもなかったのに、くそ、やられた。
まだ縁を信じているので、この文の続きが描けるかもしれないと思っている。そのときはまたあなたに、ただ骨抜きにされている、私の間抜けな話を聞いていただきたい。