3ヶ月、1番幸せだった。

彼とは会社の同期で。私は高卒、彼は大卒。
初めは同じフロアなだけで、なんとも思っていなかった。
あのときのままのほうが良かったのかもしれない、と何度考えたことだろう。

仕事に疲れた時、左を見れば、窓越しに沢山の木が私を癒やしてくれた。右を見ると、仕事を頑張っている彼の姿があった。
入社2年目、相変わらず話す機会がほとんどないのに、私は左よりも右を見る事が多くなっているのに気づいた。
これが恋だと気づいてからは、ネットで恋愛方法や、どうすれば気になってもらえるかを調べたり。それくらい私は恋愛初心者だ。
勇気を出して一言話せた日には、1日中ハッピーに過ごせた。

そこから1~2年経っても状況は何も変わっていなかった、のに。
複合機を使っていた時、後ろから声がした。「疲れた」私にだけ聞こえるような声だった。「大丈夫ですか?」としか言えずその場を去ってしまい、後悔していた。

次の休日、私は勇気を出して同期のグループから連絡先を追加して、好きな動物のおすすめ動画を教え、癒されますよ、と伝えた。
そこからやりとりが続き、2人でご飯に行くことになった。思いがけない事になり、手が震えていた。何度か遊んだ後、彼からの告白で付き合う事になった。
それからは、一瞬だった。

人の気持ちは1週間もあれば180度変わってしまうものだと思い知る

日曜のお昼前、メッセージが送られてきた。
「他に好きな人ができた、別れてほしい」
長文だったはずなのに、この1文しか覚えていない。スマホを持っていられないくらい手が震え、この状況を理解する前に涙が溢れていた。
彼が少し頑固な事は短い間でもなんとなく分かったから、引き留めても意味がないと自分に言い聞かせた。「分かった」と返した。ベットで1人、大粒の涙を流しながら。
「先週、海に行った時はもう好きじゃなかったの?」と聞くと「あの時はちゃんと好きだった」とすぐに返ってきた。
人の気持ちは1週間もあれば180度変わってしまうものだと思い知った。それよりも直接言ってくれなかった事に違和感を感じた。
「ちゃんと会って話をしたい」勇気を出して送った。自分で提案したのに、すごく怖かった、明日になってほしくないと思った。

翌日の定時後、何度か仕事終わりに会っていた公園の駐車場で話をした。
年上の女の人に告白されて、私とその人、どっちと一緒になれば幸せになれるのか1週間考え、比べたら私じゃなかったらしい。
海に行った日くらいに告白されたのかと思うと、急に海に行こうと誘ってきたのも何か理由があったのかなと思ってしまう。でも、とにかく事実を知るのが怖くて、それ以上何も聞けなかった。聞きたくなかった。

嬉しい。楽しい。好き。もっと言葉で伝えればよかった

絶対に泣かないと決めてたのに、彼の少し冷たい態度と比べられた事が悔しくて悲しくて気付いたら涙が一筋。それでも、面倒だと思われたくなくて必死で静かに堪えた。
口下手な私は自分の気持ちを手紙にした。読み始めると、堪えていたものが少しずつ崩れ、涙が止まらなくなった。まるで、急に降ってきた雨と私の感情が繋がっているようだった。
「泣かないで」と優しく言うから、もっと惨めな気持ちになった。
1時間程話した後、濡れちゃうからと私の車の横まで送ってくれた。その優しさが私をもっと苦しめることを知らないで。

彼の前で感情をあまり出す事がなかったので、彼は驚いたかもしれない。
本当は、嬉しい、楽しいをもっと表現したかった。大好きと伝えたかった。もっと、もっと甘えたかった。なのに、表現の仕方が分からなかった。
今なら言葉で伝えれば良いだけだと分かるのに。

別れて1年以上たった今、自分磨きが楽しい。
私は、今の私が1番好き。
毎日見る彼の背中も。