私がこの会社で一生懸命に働き続ける理由はただ1つ、社内ニートになりたくないからである。
社内ニート、この世で最も過酷な仕事の1つと言っても過言ではないこの「仕事」を皆さんはご存知だろうか?

なぜか仕事に必須のPCを回収され、物理的に仕事ができなくなった

かつて私もこの「仕事」に就いてしまったことがある。それまでは、お金をいっぱい稼ごう!とか、お客様に喜んでもらおう!とかそんなことを思って仕事をしていたような気がする。しかしこの「仕事」を経験してからは一変、絶対に社内ニートに戻りたくないという気持ちが、私の仕事ぶりを熱くさせるのであった。

今の職場に異動になる前(今は本社勤務で、以前は店舗勤務だったのだが)の約半年間、私は社内ニートであった。
この頃会社内では、無駄を省こう!というスローガンの下、1人1台与えられていたノートパソコンが経費削減のため1/3ほど回収されるという珍事が起きていた。接客以外のほぼ全ての業務はパソコンが無いと出来ない、つまりパソコンを回収された人は仕事が物理的に出来ない。無駄を省いた結果、無駄な人員が出たのである。

店内の隅々まで掃除して、洗い物をして、PCが空くのを待っていた

そもそも仕事量自体多いわけでは無い営業事務なのに、メインウェポンのパソコンを失った私は本当に出来ることがない。土日でお客様の来店が多い日はまだマシだ。平日のガランとした店内は最悪だった。お出ししたティーカップをこまめに洗ったり、見えないところまで掃除したり、それくらいしか出来ることがなかった。コロナ禍だったら確実に喜ばれたその行為も、やがてやり尽くした。とは言っても私にもパソコンを使ってやらなければいけない仕事がある。誰かのパソコンが空くまで、様子を伺って狙いを定めている様は惨めだったに違いない。

店長は「〇〇さんと分担して仕事して。」なんて言うが、この惨状が本当に見えていたのか?その〇〇さんに、何かお手伝いできることありませんか?と聞けば必ず「無い」と言われた。当然である。仕事を分ければ、自分の仕事が無くなるのだから。パソコンを明け渡すことになるのだから。みんな自分の居場所を守るのに必死であった。

当たり前に仕事ができる喜びを噛みしめる私の隣には、新たな社内ニート

そんな時転機が訪れる。本社への異動である。同課の同僚達は皆優しく気のいい人たちで、すぐに打ち解けた。新しい業務もやりがいがあって、今までのことが嘘のように毎日生き生きと仕事が出来た。何より自分のパソコンがある事が本当に嬉しくて、ありがたくて、自分だけの仕事があるという事実に感謝しながら日々の業務をこなし続けている。

今、私の左隣には、社内ニートの方が座っている。彼女は私より1ヶ月早くここへ異動してきたのだが、なぜかこの現状に陥ってしまったようだ。私が来たことで仕事を奪ってしまったのかもしれないし、そうでないのかもしれない。ただ、お客様も来ないこの空間で、これといった仕事もなく過ごす日々は地獄のようだと思う。時折彼女から「何がすることない?」と聞かれるが、無いと答えてしまう私は最低の人間なのだろうか。
私はただ意味も無く、自分の居場所を守るために働いているようだ。