『私35歳になるまでこどもを産みたくない』
その一言で私たちの恋愛はぷつりと終わってしまった。
29歳になる私は結婚を焦っていた。
そこで 、友人の紹介で30歳を迎える先輩と出会った。
会話をしているうちに二人は同じ高校出身だということがわかった。運命的な事実に、二人の口角は天にまで昇るほどだった。お互いに嬉しさと期待に溢れていた。
これが高校の先輩との淡い恋の始まりだった。
高校時代に戻ったような、ときめき溢れる毎日。この人と結婚するんだと確信していた
毎日来る優しいラインが楽しみだった。
『今日は何してたの?』
『仕事大丈夫だった?』
たわいもない会話に日々癒されていた。
遠くに住んでいたため会える回数は限られていた。初めて直接対面したときは夕飯を食べて夜道を散歩した。文面で話していた人が目の前にいることが嬉しかった。寒い空の下での散歩も寒いはずがあっという間に終わり、心はポカポカだった。
その後も毎日やりとりを続けてお互いの日常を共有しあった。自分の分身でもあるエッセイを送る日もあった。まるで高校時代に戻ったような、そんなときめき溢れる毎日だった。
私は「きっとこの人と結婚するんだ」と強く確信していた。
だが、最後に会う日がたった2ヶ月で来てしまうと夢にも思わなかった。
子供を持つタイミングに関してお互いに妥協ができなかった
『私35歳になるまでこどもを産みたくない』
この一言で運命とも見えた淡い恋が終わってしまった。
トップバレリーナを目指す私は、あと5年かけて達成したいことがあった。その夢のために何年も辛い練習を頑張ってきた。夢を実現してから子供を育てたいと思っていた。
だが彼は子供がすぐにでも欲しかった。
子供を若くして育てたい強い意志を持っていた。彼の兄弟も子供を持ったことも大きく彼の心を揺さぶったようだ。
様々なことの価値観は合っていたが、子供を産むタイミングに関してだけはお互いに妥協が出来なかった。
レストランの私たちのテーブルに周りが近づけないような重たい空気が流れていった。
結婚すると思っていた相手が瞬く間に消えた。夢を追う私を愛してくれる人はいるのか
その夜、私は彼に連絡をした。
『これからもう話すのを辞めますか?』
『もう一度話し合いますか?』
もちろん後者の返事を期待していた。
だが、彼の返事に携帯がコトンと手から落ちた。
『僕も辛いけど、折り合いがつく問題ではないと思う』
こうして結婚すると思っていた相手が瞬く間に消えてしまった。
人生で初めてフラれた私は未だに次の恋に踏み出せていない。
夢を追う女性より家庭を優先する女性がいいと言われたのは初めてではなかった。
最近はそろそろ家庭的な女性になるべきか、葛藤するようになった。
だが、6歳から追い続けていて、目の前に届きそうな夢を簡単に諦められない自分もいる。
35歳という少し遅い年齢に子供を授かりたい私の価値観を受け入れてくれる男性は、果たしているのだろうか。
夢を追う私を愛してくれる人が果たしているのか。
私は今、結婚への強い憧れを持ちながら孤独に夢に向かって邁進している。