真っ白なシャツに、膝上のタイトスカート。足元はローヒールのパンプス。それが私のアルバイト先の女性用制服だ。男性用は、揃いのシャツに、スラックスと革靴。そこそこのクラスのレストランならば、よく見られるものだろう。

私がこの制服に、疑問と反発を覚えたのは、ある程度アルバイトに慣れたある日の事だった。

タイトスカートと安定感のないパンプスで、機敏に動くのは無理!

それまで私は、ただ言われた通りに女性用制服を身に着け、いちホールスタッフとして日々アルバイトに精を出していた。言われた通りに皿を提供して下げ、閉店すれば掃除する。新米アルバイトがやることといえばそれだけ。でも、初めてのアルバイトでは、それすらもへとへとになってやっていた。

2ヶ月もすれば、後輩が何人か入ってきて、他の仕事も任されるようになる。次の日の会食のための配置換えが、その最たるものだ。指示書を読んで、様々な大きさの円卓を倉庫から運び込み、椅子やクロスをセットする。それを指定の数だけ。

私は要領がいい方とはいえず、太っていることもあり、周りからは随分どんくさく見えるらしい。「もっとちゃきちゃき動かんかい!」一人で持てる大きさの円卓をよたよた運んでいた私は、ある社員にこう言われた。彼は私が1動いている間に、1.5動いていた。

「はい!すみません」彼の言うことは、ごもっともだと元気よく返事をして、額に汗してテーブルを運んだ。その時は納得していたのだ。

しかし、帰りの電車に揺られながらその日のアルバイトのことを思い返していると、彼に対して怒りがふつふつと沸いてきた。
「タイトスカートと安定感のないパンプスを履いた人間に、自分と同じ動きを求めるな!」
彼に「さっさと動け」と言われたときにこう言い返せばよかった(実際は言わないけれども)。

男性も一度、パンプスとタイトスカートで力仕事を体験してみればいい。きっと、今ほど機敏に動けはしない。

脚のラインが見える「タイトスカート」じゃなかったら起こらない

また、これとは別にこの制服に対して、負の印象が定着する決定的な出来事がある。それが起きたのは、女の先輩と二人で給仕しているときだった。彼女も私と揃いの制服を身に纏い、料理を提供していた。

そのときに接客していたのは、50代くらいの男性達で、お酒も入ってほろ酔い状態だった。賑やかな会合の最中、突然、彼らのうちの一人が先輩を近くに呼びつけて「お姉さん、いい脚してるね。この、脚線美」と言った。彼の手は先輩に触れはしないものの、怪しい動きをしていた。

典型的なセクハラだ。先輩の笑顔はぎこちないものへ変わり、彼と一定の距離を開けるように接客するようになった。彼は邪な意図はなく、ただ純粋に褒め言葉として言ったのかもしれない。

他にも色々「可愛いね」だの、容姿に対してプラスと取れる発言をしていたから。ただ、初対面の人に言う言葉ではない。言われた方も気持ち悪いだけだ。

その日の帰り道、脚のラインがはっきり見えるタイトスカートでなかったら、この一件は起きなかっただろうと思った。

もっと働きやすいよう「女性の制服」も選択肢があればいいのに

この二つの出来事から、私は女性の制服にも選択肢があればいいのに…...と考えるようになった。きっと、女性にタイトスカートやパンプスを履くことを強いている職場は、私のアルバイト先だけではないだろう。

これらの格好は、力仕事を求められたとき動きづらく、またセクハラめいたものが起こる原因にもなりうる。これは私のアルバイト先にしかいえないが、上層部は皆男性である。

一体どのような経緯で、この制服が規定されたか私は知らないけれど、“女性の身体を綺麗に見せるため”という理由であるならば、即刻選択肢を増やしてほしい。見た目も大事だけれど、私たちは労働をするために仕事に来ている。優先順位を見誤ってはならない。

最後に。この文で散々服装に対する恨み辛みを重ねたが、タイトスカートとパンプス自体は悪くない。私もお洒落をしたいときにタイトスカートを着て、パンプスを履く。ただ、より働きやすい環境を考えたときに、これらは適しているとは言いがたい。

私が本格的に社会に出るまでの数年の間に、女性を取り巻く労働環境・意識が変わっていればいることを願う。