付き合って2年。彼の気持ちが段々と自分から離れていることに、気がついていなかったと言えば嘘になる。

返信が遅くなったLINE。
出てくれない事が増えた電話。
デート中の上の空。

前兆は沢山あった。

空回りの連続とどんどん離れていく彼の気持ち

「サークルの男の子に、今度2人で飲もうって誘われたの。………行こうかな。」

彼の気持ちを繋ぎ止めようと、わざと嫉妬させるようなこともした。

「いいんじゃない?」

期待していたような返事はなかった。他の男の子と出掛けるのに、嫌な顔すらしなくなったんだね。今までだったら、引き留めてくれたのに。喉元まで出かけた言葉を飲み込んだ。


そんなに乗り気ではなかったけど、意地になってサークルの男の子と本当に飲みに出かけた。
全然楽しくなかった。帰り道、何をしてるんだろうと涙が出てきて、彼に電話をかけた。

ーー通話中のため応答出来ません。

次の日の昼、
「ごめん、寝てた。」

それだけのメッセージが返ってきた。
私が彼の気持ちを取り戻そうと空回りするたびに、彼はそっけなくなっていった。

「最近夜、電話出てくれないよね。」

「………ゲームしてるから。」

ゲーム好きな彼が毎夜通話しながら没頭していることは知っていた。私はゲームに興味を持てず、これまであまり干渉することもなかった。

ある日、彼が1人の女の子と仲良くしていることに気がついた

けれど、最近の彼のSNSを見ていると、ある女の子と仲良さげにしていることに気がついた。同じゲームが取っ掛りとなり、少し前からやり取りしているようだった。………ちょうど私との仲がぎこちなくなってきた頃だ。

良くないと思いつつも、気持ちが抑えられずその子のSNSを覗いた。彼に関わるものはほとんどゲームのことだったけれど、ひとつの写真が目に付いた。何気ない、ランチの写真。私はこれを見たことがあった。

彼のSNSに載っていた写真と同じだ。

気づいた途端、血の気が引いた。ゲームの中のことだと思って、彼は私のことが好きだからと思って、つい油断していた。冷められることはあっても、他へ気持ちが移ることは考えもしなかった。

「ねえ、これ誰と行ったの?」
不自然になる、また険悪になると分かっていながら、彼を問いつめた。
「友達だけど。」
「友達?デートじゃなくて?女の子と2人で行ったでしょ。」
「だったら何?俺はだめなわけ?自分は他の男と飲みに行くのに。」
「………それは、行きたくて行ったわけじゃないし。」
「意味分かんねえよ。」

そこからはもう、何を言ってもダメだった。異性として見ていない、友達として食事に出かけただけの一点張りで、私が男の子と飲みに行ったことを指摘されてしまった。

違う。そうじゃないのに。あなたに気にして欲しくてしたことなのに。

言葉にせず態度で分かってもらおうとした罰だろうか。彼に話が通じることはなく、私たちの関係はこの日を境にダメになってしまった。

女の勘は、当たって欲しくない時によく当たる

翌週の私の誕生日、形だけ祝ってくれたディナーのデザートが運ばれてきた時、彼に別れを告げられた。

「俺たち、もう無理だと思う。」

ーーあの子と付き合うの?
問い詰めたかった。でも、去り際は引いた方がいいというインターネットの情報を信じて、別れを承諾した。

「そうだね。私ももう、あなたと居てもしっくり来ないから。」

ーー嘘だ。
ーー本当は別れたくない。
ーーまだ間に合うよ、引き止めて。

私の心の声も虚しく、彼はあっさりと帰ろうとした。このままでは駄目だと焦った私は、最後に1度だけと縋ってしまった。

隣で眠る彼を見つめて、もう寝顔を見ることも無いのだと余計に切なくなった。あの時こうしていれば、とぐるぐる考えていたら、夜明けになっていた。

後悔が先に立ってくれればいいのに。

彼とはその後、連絡を取り合っていない。正しくは、取れなくなってしまった。SNSはブロックされ、電話は繋がらなかった。
風の噂で、あの時親しくしていた子と付き合いだしたと聞いた。

ーーほらね。友達なんかじゃなかった。

女の勘は、当たって欲しくない時に当たるものだ。