「大学生が大学に行けないのはおかしい!」そんなニュースが、溢れかっていた昨年。私も自分が学生の立場、保護者の立場であれば、学費を納めているにもかかわらず、オンラインでしか授業を受けられないことに納得がいかなかったと思う。
授業料はバカにならない。そして、何よりキャンパスライフというほとんどの人が、一生に一度しか体験できない貴重な1年がコロナウイルスによって、ほとんどなきものになったからだ。
理由は様々だが、一定数の学生は「オンライン授業でよかった」と言う
私は大学職員という立場から、この報道に違和感を持った。報道では一切出ていないが、実は一定数の学生は「オンライン授業でよかった」と言うのだ。いい例が、休学や留年をしている、決して少なくはない学生たちだ。
理由は様々だが、健康面に不安がある、学校に行くのが怖い、人間関係に悩んでいるなどで、やむなく休学や留年という選択をしている学生が多い。そのような学生にとっては、大学に行かず、オンラインで単位を取って、卒業を目指せるのは非常にありがたかったのだ。
実際、長年大学に来れず何年も留年していた学生が、オンラインになったことで、がんばって勉強し9月に卒業したとき、私は嬉しくて嬉しくて感動してしまった。
また、資格試験でとても忙しい大学3年生の学生は、片道2時間の通学時間がなくなり試験勉強できて助かるし、嬉しいと話していた。
結局何が言いたいかというと、今回の問題にしても、学生や保護者など以外の第三者が両者の意見を聞かずして、だめだと一方的に意見をするのはおかしいのではないか、ということだ。
大学教員たちも「対面授業にできたら」どんなにいいかと思っている
実は、大学側が頑なに対面授業を拒否しているような報道になっているが、教員たちも対面授業にできたらどんなにいいかと思っている。たしかによく考えたらその通りで、多少の変更はあるにせよ、慣れた教室、慣れた方法で学生に授業を一同に提供できるし、反応を見ながら授業を進めることができる。
ただ、大学の教室や実習室、実験室は限りがあり、ソーシャルディスタンスを保ったり(つまり学生を守ったり)、履修者数の倍のキャパの教室をあてたりすることは、授業数が多すぎてかなり困難なのだ。また、高校生までと違い、大学生の行動を厳しく制限することはなかなか難しい。
ただやはり、学生や保護者の反応を見ていると、オンライン授業のクオリティや大学への対応に不満や不安を持っていることは日々感じている。直接話せばわだかまりが解けることも、顔が見えない分、イライラを募らせてしまっているのも痛感する。
それは大学にも責任があるし、もちろん一職員の私たちにも責任は大いにあると思う。学生の親や本人たちが汗水垂らして働いた貴重なお金をいただいているのだから、その期待に応える責任は当然のことだ。
裏と表がある。だから、一方的な情報を鵜呑みにせず、真実を見極めて
だから、授業を見直し、改善し、対応する。そのことをやめては絶対にいけない。私は授業には直接関われないが、事務をするものとして、これで本当にいいのか? とこの1年問い続け、思い切って変えてみたこともたくさんあったし、これからも変えることを恐れず働きたい。
「大学生が大学に行けずオンライン授業なのはおかしい。今すぐ全て対面授業にするべきだ」という意見が、必ずしも正義なのかは考えるべきだと思う。行きたくても学校に行けない学生の親だったら、はたしてそう思うだろうか。また、第三者が何も知ろうとせず、意見をするのにはどうしても疑問を覚える。
どんなことも裏と表がある。光と闇があるのだ。だから今回の事に限らず、一方的なメディアの報道を鵜呑みにせず、この報道は果たして真実なのか、一方的ではないのかをきちんと見極める力をみんなが持てたらいいなと思う。