「元カノにヨリを戻そうって言われた」
突然何の前触れもなく届いた当時の彼氏からのメッセージに、私は言葉を失った。
毎週水曜日の夜は電話をすると決めていたのに、そのメッセージが届いたのは、2ヶ月記念日の3日後の水曜日の朝だった。

その日は心の中が空っぽになったり、元カノより自分が優先してもらえなかった理由を探したりして、何事も手につかなかった。私は別れたくないと伝えてみたものの、元カノと戻りたい彼の意志は固く、木曜日の朝、私から「別れよう」とメッセージを送った。

彼氏の元カノが復縁を希望してきた。
これが私が彼をふった理由だ。

初めての彼氏ができた喜びと、大人の階段を一気に駆け上がったような刺激

私たちはバイト先で知り合った。当時私は大学1年生で、彼は専門学校の2年生だった。
バックグラウンドが全く違うこともあり、バイトの休憩時間に彼がする話は、新鮮味があって面白かった。
彼には気さくでまっすぐな人だという印象を持っていた。

ある時バイト終わりに、彼にごはんに誘われた。てっきり何人かで食べるものだと思っていたら、二人きりだった。
帰り道、唐突に彼に手を繋がれた。私はそれまで誰とも付き合ったことがなく、手を繋ぐ行為自体に免疫がなく、脊髄反射の勢いで手を振りほどいてしまった。
何より彼には彼女がいると思っていたのでそのことを指摘すると、彼はジェスチャーで掌を合わせた状態から離し、「別れた」と伝えてきた。
その後すぐに彼に告白され、私たちは付き合った。

その日の夜は、初めての彼氏ができた喜びと、大人の階段を一気に駆け上がったような刺激で、胸がいっぱいになり、なかなか寝付けなかったことを覚えている。

未練だらけの小さな違和感たちに気づいてはいた

付き合っていた時のことをよくよく思い出してみると、別れの前触れはゼロではなかった。
初デートで訪れた定番のデートスポットではどこか楽しそうではなく、スマホにはペアらしきキーホルダーがぶらさがったままだった。
それにバイト先では私と付き合っていることを一切公開しなかったし、彼の告白の言葉は私のことが「好きだ」ではなく「いいなと思った」だった。
未練だらけの小さな違和感たちに気づいてはいたものの、見えないふりをして、初めて彼氏ができたウキウキ気分を味わっていた。
一方で、何となく恥ずかしくて彼には恋愛経験がないことを伝えていなかった。
私の友人曰く、私は恋愛に慣れていそうな見た目をしているらしく、とてもそれまで彼氏がいなかったようには思えないそうだ。
外見とは裏腹に素の私は、彼の中で元カノへの思いを募らせるには十分すぎるほど男心を理解していなかった自覚がある。

彼の元カノとして彼の思い出の1ページに存在していたい

「分かっま」
分かった、と打ち損ねたであろう誤字で終わった彼からの最後のメッセージは、スマホの機種変更とともに履歴から消えた。
あれから7年の月日が経ち、何に対しての「分かった」だったのか、もう思い出せない。
でも未だに彼に告白された場所、一緒に働いたバイト先、デートで訪れた場所の側を通ると胸がチクチク、もやもやする。

別れてから程なくして、彼は専門学校の卒業準備のためバイトを辞めた。別々の人生を歩み始めた私たちは、もうこの先も会うことはないだろう。
こうした少しあっけない終わり方をしても、彼が私の初カレであることには変わりない。
しかし、彼の中では、私は「なかった存在」になっているかもしれない。

彼と別れてからは、「嫌いじゃないから」という理由で安易に男性と付き合うことはやめることにしている。そして、できるだけ猫は被らず、素の自分を見せ、他人から見える私とのミスマッチを防ぐよう心掛けている。
その一方で、いい感じの雰囲気になってきた男性には、元カノと別れた理由や連絡を取り続けているか聞ずにはいれない「重めの女」になってしまった。

彼氏の元カノの復縁希望が理由で別れた私たちだからこそ、私が彼の元カノとなった今、願わくは、私も彼の元カノとして彼の思い出の1ページに存在していたい。2ヶ月間といえども、一度は彼氏彼女として思いを重ねた仲なのだから。