14歳、全般性不安障害になった。“それ”と生きることを決めた記憶の話

14歳のときに「それ」は訪れた。

人がびっしりと詰め込まれた場所で感じたのは、言いようのない不安感だった

毎週月曜日に開かれる朝の全校集会で、息苦しさを感じた。
心臓が耳の裏でドクドクと脈打ち、口から何かが吐き出てきそうなほど緊張する。手足は震え、呼吸が上手くできない。過呼吸とはまた違う。言いようのない不安感が私を襲った。

全校生徒がびっしりと詰め込まれた体育館で、扉は全て閉ざされている。校長先生が舞台のうえでなにやら長話をしていたが、そんな話を聞く余裕などない。あまりの苦しさに私は先生に声をかけ、外に出たいと訴えようと思った。

しかし、私のクラスはちょうど体育館の真ん中付近に並んでいで、近くに助けを求められる相手はいなかった。逃げ場がないと分かった瞬間、「死ぬかもしれない」と何の根拠もなく思った。
あの日私は生まれて初めて、「死」に憑かれたとハッキリと感じた。

逃げ場がないことが分かりきっている修学旅行は欠席をした

それから私は中学を卒業するまで、全校集会に一度も出ることはなかった。クラスの皆が集会に足を運ぶとき、私は自席でひとり、その帰りを待っていた。

誰もいないがらんとした校舎。無音という音がする冷え切った廊下をあてもなく歩き、「まるで私以外みんな死んでしまったみたいだ」と馬鹿みたいなことを思った。あのとき“死”に憑かれていたのは間違いなく私のほうなのに。

幸いなことに、「逃げることができる」と確信した場所では、発作は起こらなかった。
例えば、授業。席は必ず一番後ろの列で廊下に近い側。手を上げて先生に助けを求めても変に目立たず、いざとなればすぐに廊下に逃げられる。息苦しい授業のなかで最も好きだったのは、体育と図工の時間だった。

体育は基本外で行われていて、「逃げ場がない」と感じることはそうそうなかったし、図工は自由に創作する時間が多かったから、集中していれば“それ”がやってくることはあまりなかった。

なにより辛かったのは、長時間の拘束が発生する静かな環境だった。これはもう、“それ”の大好物だといわんばかりに、言いようのない恐怖感が私を醜く包み込む。
だから、楽しみにしていた修学旅行は欠席した。

行けるわけがないことを、私が一番よくわかっていた。止まることを許さない高速道路でのバス移動、遅れに厳しい機密なスケジュール、毎夜行われるだろう集会。想像するだけで吐き気がした。

時に辛く、幸せな自分にはどうにもできないもの。私は共に生きていこうと決めた

私は自分の身体を、精神を恨んだ。年齢が若すぎるということもあり、精神科は受診せず、小児科でカウンセリングを受けたり、身体に負担の少ない漢方薬を処方されたりした。

小児科でカウンセリングを受けたさい、医者は「なにか大きなストレスを抱えているみたいね。家族とか学校でなにかあるのかしら?」と甘すぎるくらい柔らかな声で言い、とぼけた顔をしていた。

私はあのとき見た、子どもに話しかける医者の顔を今もありありと思い出せる。

私はそのとき、本当はこう言いたかった。
「憑いてくるんです。それがいつも」

学校には仲の良い友だちもいて、家族の仲は良すぎるくらい良かった。生活になんの不満もなく、あるとするならば朝、姉妹で洗面所の取り合いをすることくらい。私は自分がなぜ“それ”に好かれたのか、まったく理解ができなかった。

私は“それ”を自分や他人がどうこうすることが難しいと判断し、ともに生きていこうと決めた。そして、中学を卒業した。卒業式を無事に終わらせることがどれほど大変だったか説明することは億劫なので、省こうと思う。私は“それ”と出会ったばかりで、「それ」の本当の名前を知ることになるのは、まだまだずっと先のことになるもしかしたら、この話は何の役にも立たないかもしれない。
でも、これは確かに私の経験した、辛く、そしてときに幸せだった記憶である。
この話を読んでくれた誰かに、この想いが通じることを願うばかりだ。

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