「あのさ、遠回しに言わないで、妊娠してるかしてないかを診てほしいってはっきり言って」
あれは１０代最後の冬。恐る恐る行った人生初の産婦人科で、男性医師に語気強めで言われた言葉である。
事前の問診で、生理不順と原因不明の子宮の痛みについての相談と伝えたのだが、その言葉にびびってしまって、もう何も言えなかった。
確かに性交渉はあったから、そういう風に考えられても仕方ないのかもしれない。それでも、妊娠以外の体の悩みも、性交渉があれば全部そういう風に言われちゃうもんなの？排卵促進剤を処方してもらった帰り道、もう二度と行きたくない、と半べそもんだった。歯医者も献血も怖くない私が、唯一苦手で極力行きたくない病院、それが産婦人科である。

生理がこない。自分の体が今どういう状況なのか知りたいのに…

そして現在。
うーむ、生理がこない。ちょっと熱っぽくて、子宮辺りに鈍痛。明日にでもきそう、を繰り返すこと１週間。予定日からは間もなく２週間経過。避妊に失敗したわけではないことは彼と確認していたし、まあでも念のため、と検査薬を買うが、結果は陰性。
「あー、だよねえ」と思うと同時に、病気なのではないか、早期閉経かも、と更に不安は増大。ネガティブ思考に拍車をかけたのは、行こうと思って全く行けていない子宮がん検診が頭をよぎったのと、もうすぐ３０歳という新しいステージにあがるからかもしれない。
自分の体が今どういう状況なのか知りたい。そう思いはするけれど、産婦人科に行くという選択肢が、どうも遠い所にある。
いやいや、分かっているのだ。人生初の産婦人科だって、事前に口コミや評判をもっとよく見るべきだったし、異性の医師が不安なら、女性医師が診てくれる病院も選べただろう。
つまるところのリサーチ不足。だとしても、あれは結構ショッキングで、以来産婦人科の待合室では「妊娠をのぞんでないのに性交渉して、色んな理由をつけて都合よく病院を利用している人間」と責められている気がしてならない。妊娠以外の理由でここに座っている自分が、場違いに思えて、肩身が狭くて仕方ないのだ。

知りたいときに自分の体のことが分かれば、どれだけ心が健康になるか

そんな中、ぼんやりと思うのは、子宮内及びデリケートゾーンがどんな状況にあるのかセルフチェックできる商品があればいいなあ、ということだ。時間も曜日もタイミングも人の目も気にせず、知りたいときにどこでも自分の体のことが分かるというのは、どれだけ気持ちの負担が減り、心の健康に繋がることか。
特に、生理不順な私が一番思うのは、生理がいつ来るか分かる商品……せめて排卵が済んでいるのかどうかが分かる商品があるといいなということだ。なんか、こう、妊娠検査薬みたいに尿検査タイプのものとか、タンポンのように膣内に直接挿入して確認できるようなものとか。
調べてみると、現在推奨されているのは、基礎体温の計測と、生理周期を整えるという意味で低用量ピルのふたつ。なるほど、即効タイプでは現段階で知る術はないんだなあ、とひとつ勉強になりました。

体の異変は、自分が一番よく分かる。だけど、なかなか相談できないの

女性特有の症状もそうだ。以前、女性の５人に１人がかかるといわれるカンジダ膣炎になったとき、自力で調べるには限度があることを思い知った。結局どの検索ページにも「自分で判断せず、速やかに医師の診断を受けましょう」と書かれている。

あれもカビの一種なら、カビの成分を検知してくれるような商品ができて、ある程度どういう症状に近いのかが分かれば、病院に行かずとも薬局で済んだかも。なんて。
自分の体の異変は、自分が一番よく分かるもの。だけど、なかなか人に相談できないのがデリケートゾーンの悩みである。症状や傾向に特徴はあれど、個人差があるものだから、「いつもと違うけど、どういう状態か分からない」がほとんどだと思う。その中で、ある程度正確なセルフチェックができれば、自分の体への不安や悩みが軽減し、どんなにか日々を快適に過ごせることだろう。
と、極力産婦人科に行きたくない２７歳がうだうだ言っている間に、ようやく生理が訪れました。５１日目という数字を眺めながら、まずは基礎体温の記録を始めることと、タイミングを見て、子宮がん検診に行こうと思います。