女性に生まれて、女性として生きておきながら、周りにはなんとなく男性が多かった。親しくなる相手は女性の方が多いけれど、女性しかいない空間には苦手意識があった。

バイセクシャルなので、親しくなる前の女性があんまり近くに来ると、びっくりしてしまうということも理由かもしれない。

女性が多い職場は、私にとって逃げ場のない不安な場所のように思えた

今回働くことになった場所は、女性が圧倒的に多かった。コロナ禍で仕事の倍率はどこも高いだろうし、すぐにお金が欲しいし、選べる他の仕事よりは仕事内容が自分に向いていそうだし、希望していた仕事は落ちてしまったし。

女性しかいないようなところは不安だなんて文句も言っていられなくて、バイト募集のページを見て電話をかけた。

面接のあとすぐに採用されたが、もうドキドキしていた。30人ほどいる中に、男性は2~3人ほどしかいない。常に男性と関わっていたら浮いてしまうし、男性が一人もいない日だって当然あるだろう。上手くやっていく自信がない。

女性と関わったことはもちろんあるのだから、その調子でいけばいいと自分に言い聞かせたが、不安が尽きなかった。私には女性しかいない場所が、逃げ場がないように思えたのだった。

初めて「女性特有のめんどくささ」を思い知り、無視はできなかった

この場所で私は、女性特有のめんどくささというものを、多分初めて思い知った。例えば小さなことで文句を言われたり、本人がいなくなった途端に悪口が始まったりすることだ。そういうものがあるんだとは知っていたが、安全な場所で見聞きするのと、自分が言われるかもしれない立場になるのとではわけが違う。

そういうことを言う人は、本当は寂しいだけなんじゃないか。私にはそんな風に見えた。そして全員が全員、そういうことを言うわけではないこともわかった。

これまでは、こういうめんどくさいこととは無縁で生きてきた。周りが男性ばかりだったので、異性はそもそも嫉妬の対象にはならなかった。“女らしくない女性”でいれば、同性からも同性として批判されることはない。「女のくせに」という嫌味を言われても、それをやり返す方法は知っていた。黙々と努力して、そんなことを言う程度の小物のずっと上へ行けばいいだけだ。

しかし、女性同士では無視は逆効果で、どれだけ上達しても細かいところで突かれる。だから男性ばかりの中でなら無視できたものと、女性ばかりの中では向き合わなければならなくなった。男性が多い中では仕事ができれば、むしろ仕事さえできればなんとかなったのに、女性が多い中ではそうはいかないんだと気がついた。

めんどくさいと思い避けていた「女性への対応」を学ぶことができた

すぐに路線を切り替えた。周りと親しくすることに重きを置いた。すると、すぐに仕事がやりやすくなった。こんなに変わるのかと驚くほどだった。人との繋がりは、大事なんだなと身にしみた。

そして、女性特有の悩みなどの相談にも乗ってもらうようになった。彼氏との関係や家事についてなどだ。雑談などもしている。これまでは悩みも全部力技で押し通して解決してきたが、やはりそれには限界がある。柔らかく対応する方法を知った。

また、正直めんどくさい……と思ってしまうような女性への対応も学んだ。適度に話しかけて、お小言は聞き流して(もちろんしっかり対策はする)、自分の話は上手くぼかすことだ。きっと隙がない人になれたらもっといいんだけれど、私にはまだ難しそうだ。それでも人間として、とても大事なことを学んだ気がする。

それまで私にとって女性という存在は、“繊細で傷つきやすくて不思議なもの”だったが、今では“強くて複雑でいろんな人がいて、上手く作用したりしなかったりしているもの”になっている。もっともっと女性について学んで、強い自分になりたい。