菅総理大臣が誕生した。
前総理の突然の辞任から就任まであっという間だったように感じる。

というのも正直あまり興味がなかった。総理大臣が変わったところで私たちの生活が変わることはないだろうと思っていた。
ただ、所見表明演説を報じたニュースを耳にして一気に私の気持ちは揺れ動いた。
不妊治療の保険適用である。

「妊娠出産は病気ではない」「不妊症は病気ではない」
…理解はできる。特に病気療養中の方は同じにしないでくれと思うのかもしれない。
しかし出産は命懸けだともいう。様々な薬剤を投与されたり、出産後は縫合処置が必要なこともあったり、明らかに「普通の状態」ではない。その出産に公的医療保険が適用されないのはなんだかなあと感じていた。
ただ出産一時金としてその費用のほとんどが申請すればかえってくるらしい。

不妊治療をしなければ妊娠出来なくてもほとんどが保険適用外

では不妊治療はどうか。原因不明不妊が一番多いようだが、早発閉経や排卵障害など原因がはっきりすることもある。治療をしなければ「病気でない状態」である「妊娠」が出来ないのである。
妊娠を病気ではない普通の状態と定義するのであれば、それが治療をしないとかなわない不妊症は病気ではないのだろうか。

それなのに不妊治療は高度生殖医療も含めてほとんどが保険適用外であり、助成金も所得制限や年齢制限で受け取れないこともある。
その問題がニュースで取り上げられるようになり、とてもありがたく感じた。

私は不妊治療を受けている。しかし、それを職場には伝えていない。
私が人付き合いが苦手で、しかも男性ばかりの職場であることもあり私は腫れ物に触るような扱いである。そこに不妊治療だなど言いだしたら、周囲の男性たちはさらに私とコミュニケーションが取りにくいと感じるだろうことはわかっているからだ。
噂になることを恐れ、親しい友人にも伝えていない。

全て諦めてしまいたくなるけれど、孤独な中でも自分を奮い立たせて

検査結果次第では何度も受診を指示され、仕事の合間を縫ってなんとか受診する。
ただいつ治療のステップアップで多額の治療費が必要になるかわからないから仕事を辞める訳にはいかない。
ホルモン治療により精神的に不安定になりながら夫に気を遣って、夫婦生活も持たなければならない。
幸せそうに子供の話をする友人にも笑顔で対応しなければならない。
もう、仕事も家庭も治療も全て諦めてしまいたくなる。でも、自分がこうだから赤ちゃんが来てくれないのかもしれないと思いなんとか自分を奮い立たせる。…自己完結。

そう、私は孤独を感じている。
一人で戦っているように感じる。
職場にも友達にも誰にも不妊治療をしていると言えない。
恐らく私のように周囲に言えない女性は多いと思う。妊娠出産は皆必ず報告するし、病気療養が必要になれば近しい人には告げ、職場にも一応伝えると思う。

不妊治療が病気だと認められれば周囲に告げやすくなるかもしれない

私は、不妊治療を隠したくなってしまうこの風潮を変えたい。
不妊症は妊娠できない病気なんだと認められ、その治療が一般化すれば病気治療のためと周囲に告げやすくなるのではないか。
周囲にきちんと理解してもらうことで、ストレスの多い不妊女性が少しでも生きやすくなるのではないか。
不妊症を病気とすることで、治療水準の低下や不妊症を理由に仕事に長期間穴をあけてしまう女性が出てきてしまうなど、様々な問題が発生してしまうことも予想されるため簡単にはいかないと思う。
しかし、菅総理の政策実現がその一歩となることを願う。
ただ費用の問題だけではないと伝えたい。不妊女性に対する理解が広まることを願う。