本を読んで泣いたことはあるか?
映画化された小説や、大人から子どもにまで愛される漫画、激動の生涯を歩んだ人のノンフィクションなど、心を強く響かせる本は読み手に涙を促す。
私も最近、本を読んで泣いた。
その本は、マナーブックだ。

社内で注意を受けることが多い私。「すみません」も言えない自分の生き方を悔やんだ

社会人になって1年が経とうとしている現在、上司から「2年目になったら、周りからは『もうわかってるだろうな』と思われて、何も言われなくなるからね」と強く言われるようになった。
私は社内で注意を受けることが多い。
その内容は、
「なぜ納期に間に合わなかったのか」
「なぜ入力ミスをしてしまったのか」
「どうして報告をしてくれなかったのか」
といった仕事に関することだ。

しかし、仕事より多く周りから言われることがある。
それは、
「出勤時間が遅すぎる、余裕を持って来なさい」
「うがいをしたあとは流し台を水できれいにしなさい」
「申し訳ないことをしたら『すみません』と言いなさい」
「何かしてもらったら『ありがとうございます』と言いなさい」
といった生活態度における内容の注意だ。

初めて生活面の注意を受けた時、「そんな当たり前のこと、何で気にされなくちゃいけないのだろうか?」と疑問に思った。
だが、ひとつひとつ注意を重ねていくうちに、「常識的なことなのに、どうして自分はわからなかったのか?」と恥ずかしくなっていった。社会人にもなって、周りへの配慮もできず、「ありがとう」も「すみません」も言えない自分になってしまった、自分の生き方を悔やんだ。
そして、上司から言われた「2年目になったら、周りからは『もうわかってるだろうな』と思われて、何も言われなくなるからね」という言葉は仕事のことだけではなく、私の非常識な振る舞いについても指しているのだろうと思った。

これ以上恥ずかしい大人になりたくない。私は1冊のマナーブックを手に取った

これ以上、恥ずかしい大人になりたくない。
そう思った私はマナーブックを読むことに決めた。
選んだ本は、どの本屋でも目立つところに置かれていた人気の1冊だった。

読み初めの頃は、
「『小さなバッグを持く』って書いてるのに、『ハンカチとポケットティッシュを持ち歩きなさい』『折り畳み傘を持ち歩きなさい』『懐紙やポチ袋を持ち歩きなさい』『白い靴下を持ち歩きなさい』って、持ち歩かなきゃいけないもの多すぎない?小さなバッグに入るわけないじゃん」
とバカにした気持ちもあった。

読み進めていくうちに、『時間には余裕を持つ』『経過報告はマナー』『謝る時は言い訳をしない』といった職場で注意されてきたような内容が目について、ドキっとした。
なかでも、『育ちのいい人に知ったかぶりをする人はいない』というような言葉が胸に突き刺さった。私は、相手に話題を合わせようとして知ったかぶりをすることがよくある。相手の知っていることを私が知らないことで、相手がショックを受けるのではないかと思い込んでいたからだ。
しかし、知らないことや初めてのことを素直に伝えて、尋ねることが当たり前のマナーだということに、23年間生きてやっと気づいたのだ。

自分の生き方を今から変えてもいいと気づけた。私も品のある常識的な社会人になれるのだ

終盤に差し掛かった頃、私の目から涙が落ちた。
本の中には200以上のマナーが載っているが、私の普段の行いで身に付いているもの、知っていたものはほとんどなかった。私の振る舞いはとにかく品がなかったのだと知った。

自分の人生を恥じた。どうしてこんな自分が生きているのだと苦しくなった。
何より、「この人は育ちが悪いからこんな振る舞いをするんだ」と周囲に思わせることで、私を育ててくれた親の教育が疑われることが申し訳なかった。

泣きながら読んだ最後の章にはこんなことが書かれていた。
「育ち」は変えていいのです。「育ち」は変えられるのです。

この言葉に私はハッとした。
この本を読んでやっと知ったマナーを今から実践して、自分の生き方を今から変えてもいいと気づけた。
私の社会人生活は2年目になる。まだ、2年目なのだ。
社会人としての正しいマナーに1年目のうちに気づき、2年目で身につけていけば、3年目や4年目、10年目、20年目の頃には品のある常識的な社会人になれる。
今からなら、熟練した社会人になった頃には「育ちのいい方なのだな」と思われるような私になれるのだ。
注意をされなくなったとしても、注意をする必要がない大人に。

(参考:諏内えみ著 「育ちがいい人」だけが知っていること)