この20数年生きてそれなりに恋をしてきた。そのほとんどは通じ合うこと無く終わったけれど、そんな恋ほど忘れることが出来てないでいる。

好きな人の好きな人になりたい、少しでも長く他の誰よりもその人と一緒ににいたい、そんな思いだったのにいざ付き合うと否応でも相手に対し不快感を抱いたり、腹立たしく思ってしまう。

だからなのか、私は付き合ってきた人よりも付き合えなかった人のことをよく思い出すし、夢にまで現れる人もいる。嫌だと感じた部分もあるだろうが、そんなことを忘れてしまえるぐらいに、出会いのきっかけや好きだと思えたこと。

過ごした日々が美しくて眩いものになっているのだ。だから、私は今でも忘れられずに生きているのだと思う。
その中でも私史上最も忘れずにいる彼の話。

高校1年の春に出会った彼。文化祭をキッカケに仲良くなった

高校一年生の春、彼に出会った。
中学までとは違いガラッ変わった人と環境、新たなスタートをきった。入学してすぐに文化祭の準備が始まり、母校では催しとしてカルタ大会があった。
必ずクラスから3人出場しなければならず立候補者が出なかったためじゃんけんで選抜メンバーを選んだ。結果、じゃんけんに負け続けた私と彼は選抜メンバーとして大会に出ることになった。それがきっかけで彼と関わるようになり、文化祭の打ち上げも私と彼で幹事をすることになった。

当時ラインが普及しだした頃で連絡を取るにはメールの時代だった。
you got mailと画面に表示され、それが彼だった時自然と頬が緩んだ。
文の最後に赤いハートがつくと声をあげて喜び家族に引かれたこともあるし、電話がかかってきた時なんかは異常に声が高くなりドン引かれた。

それからも定期的に連絡を取り続けて、友達とご飯を食べていると目の前に来て私の机の上に肘を置いたと思えばフッと笑みを浮かべて去っていった時なんかは私ではなく周りの友達が黄色い声をあげた。その声が恥ずかしさを余計引き立てた。
その雰囲気が徐々にクラス全体へと広がり、いつしかクラス全体が私と彼をくっつけよう!という空気に染まった。

意味深にやってきた彼。告白されるのかと思いきや、そうではなくて…

そんなある日、渡り廊下で友達と話していたら彼が友達に背中を押され私のところにやってきた。なにか言いたげな顔をしてこちらを伺う彼に私は期待を覚え、何?と彼に聞いたとほぼ同時に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り彼は何も言わずただ逃げるようにしてその場を去った。周りにいた友達は絶対に告白する気だったよと騒いでいたし、同様に私も同じ思いだった。

けれど、私達は付き合うことはなかった。今思えば、そもそも彼は私のことが好きでもなんでもなくて周りがただただ囃し立てただけだったように思う。
それからは何となく、前のように話すことも連絡を取ることも減っていきクラスも離れ次第に好きという感情も薄れていった。

だけど、その三年間彼だけは何故かずっと特別だった。
他に好きな人ができても彼と話すと嬉しいと思えた。高校生活最後の夏、教室に2人きりで彼から数学を教えてもらった時は幸せでどうにかなりそうだったし、体育祭のフォークダンスではペアになって手を繋いで入場した。ペアは自分達で決めれるものでなく名前の順に沿って選ばれるものだったから、その偶然が生んだプレゼントに私はこれ以上ないぐらいに喜びを噛み締めた。

高校を卒業した今もなお「特別」だと思う気持ちは変わらない

三年間なんて言ったけれど、高校を卒業しても特別だと思う気持は今も変わっていない。
彼に彼女が出来たと聞いた時は彼氏がいたにも関わらずかなり落ち込んだし、今でもインスタグラムでストーリーを彼が見ていると嬉しく思う自分がいる。
夢にも彼はよく出てくる。普通のクラスメイトとして彼は過ごしていて、私は声をかけようとするけどいつも声をかけられずに彼と恋仲になるなんて展開はなく夢は覚める。

そうして、私はまた彼のいないいつもの日常を送る。

彼が知ったらさぞ戦慄するだろう。未練がないと言えば嘘になってしまうような、こんな話。それでも、私は書き留めておきたかったし書き留めるべきだと思った。
色んな恋をした中で、彼を想った日々の記憶を私は青春の、人生の、一部としてずっと大切にしていきたい。