AM6:30 「帰宅なう」の一言のメッセージ。
私とあの人は恋人ではない、そして、友達でもない。
大学時代にバイトがてらに始めたインターンで、知り合った。
あの人は同い年なのにすこし大人で、私と違っていつも冷静に物事を見ていた。
対照的に破天荒である私に、あの人がかける言葉はいつも直球路線で真実だった。というか真実のように思えた。
私とあの人は、最初から友達以上の関係だった。真面目な話もするし、ふざけあったりもして、眠れない夜には電話もして朝を迎えた。深夜に落ち合って、コンビニでアイスを買って、公園のブランコで星を見ながら食べた。
いつもクールなあの人が、私に弱い部分を見せてくれたこともあった。わたしは戸惑って、何もできなかったけど、そんな時もそばにいた。
身体の関係はなかった。お互いにとって相手が、「なんでも話せて、同じことが好き」な人だっただけ。そういう関係に疑問を抱いたことはない。私とあの人が共有する何かに特別な意味はなかったけど、私はあの人との時間が特別だった。
同じことが好きだったのは、私があの人の好きなものを好きになったから
…と、いうのが表面上の話である。
あの人と私の好きなものが同じだったのは、私があの人の好きなものを好きになったからだ。
クールな彼とたくさん話したくて、明るく笑顔でつきまとった。あの人といろんな話ができて、どんな時もそばにいれて、嬉しかった。
私は、最初からあの人をずっと好きだった。
インターン終わりに、初めて一緒にご飯を食べた時、店内のキラキラの照明があの人の目に反射して、あの人の目がキラキラ光っていたのは今も忘れられない。すぐに恋に落ちてしまった。
どちらかが恋愛感情を持ってしまうと、男女の友情は成立しない。私は特別な関係になりたいと、本当は願っていたけれど、幸せが続くならその気持ちを隠しとおそうとさえ思った。
でも月日が過ぎていくにつれて、私の感情は大きくなる一方だった。
それでも、私は私で関係を壊すのが怖くて、一歩が踏み出せなかった。しかも、あの人に優しくされたり、すこし特別扱いされたりすること自体が、辛くなった。
私が特別なのではなくて、単純に彼はきっと優しい人間なんだろうと思った。ただ私に仕方なく構ってくれていただけであると。そのことに気づいた。
ある日、普通に連絡を取っていて、あの人からさりげなく朝帰りしていると伝えられた。
あえて言ってきたことに、謎の女の勘を発揮して、真面目な顔で「モテ男だね」と返した。
「もう会いたくない」と伝えたら「いいよ」としか返ってこなかった
その日からあの人のことを諦めようと思って、距離を自分から取った。「もう会いたくない」と伝えると、あの人からは「いいよ」しかこなかった。
そうか、私はそんな軽い存在だったかと思って、泣いた。
あの人はやっぱり、私のこと好きだから優しくしていたわけでもなかったのだろうし、こんなに長く時間を共有してもあっさり別れられるのも冷たくてショックだった。
その後も、好きな気持ちはすぐに消えなくてしんどかった。辛いことがあるとあの人に言いたくなった。LINEを打とうと何度も名前を検索してしまった。乗り越えるのに3ヶ月ほどかかった。
辛いことがあり、落ち込んでいると、人生に意味の無いことなんてないと誰かは言い、あなたを励ますだろう。失敗も辛いことも、全てその後の経験につながるはずだ、と。
しかし、わたしは、あの人に、あの日、出会わなければよかったとさえ今は思ってしまう。
全く、意味の無い時間を過ごしてしまったわ。