あの子がいなかったら、今の私はない。
あの子がいなかったら、人生を楽しんでいない。

あの子がいたから、自分の顔と性格を受け入れられた。
あの子がいたから、大学生になれた。
あの子がいたから、社会人になれる。
あの子がいたから、友達がいる。彼氏がいる。
あの子とは、高校の部活が同じだった。
あの子とは、3年間違うクラスだった。
あの子とは、仲良しグループは違った。
あの子とは、家が遠かった。

あの子は目立つグループにいた。
派手で、可愛くて、友達が多くて、よく遊んで、よくSNSにいて、バイトして、メイクして、ピアス開いてて、JK トレンド最先端の子たちが集まるグループにいた。
そんな彼女は、綺麗というか、クールというか、そちら側のルックスを持つ子だった。
あの子も髪を染めていたけど、1人だけショートヘアだった。
時々エクステをつけていた。他にエクステをつける子はいなかった。
流行りのバッグやメイクじゃなかったし、部活着もみんなと違うタイプだった気がする。
どれもあの子の個性が出ていて、すごく似合っていた。
だけど、話し方や声は可愛かった。
それにあの子は、成績がすごく良い学級委員で、2年生からは部員50名を超える大所帯の副部長だった。
みんなと違う見た目で、やっていることもみんなと違くて、見た目と話し方のギャップがあるあの子にすごく興味を持っていた。
誰にも染まらないあの子独特のカラーが好きだった。

目立つグループからは見下されていると思い込んでいた私に彼女は

だけど、私はあの子と同じグループに入るのは無理だった。
バイトをしてないから入学前に買ってもらったバッグとソックスだったし、そんなに遊びに行けないし、コスメは一つも持っていなかった。
それに中学で文化部だった私には、目立つグループは遠かった。
私は彼らにコンプレックスを感じていて、彼らから見下されていると思い込んでいた。
だから、目立たないように、でもおもしろいって思ってもらえるように、社交的だよって思ってもらえるように、理由は分からないけど何でだか頑張っていた。
彼らにコンプレックスを抱きながらも、コンプレックスなんてなければ人生や将来はもっと明るいんじゃないかと思いながらも、彼らの視線も欲しがっていた。私はコンプレックスばっかり見て、意識して、参考にして、コンプレックスを軸にした高校生活を送っていた。
だから、あの子もコンプレックスの一部のはずだった。

それなのに、共通点もなければそもそも言語から違ったのに、話すようになったきっかけは覚えていない。
女子だけの部員30人オーバーの代の私たちは、それぞれ別の仲良しグループにいたし。
だけど、あの子は、私に、“可愛い~!”と言った。
初めは聞き間違いかと思った。

今なら私の辞書の中にも「可愛い」はあるけれどJK当時は全否定

今は非対称だった二重が自然とくっきりしてくれたし、厚めの唇を個性と捉えられるようになったし、ヘアアレンジも数種類できるし、ピアスとか香水とか服装とか色々やって可愛くなる努力をしてる。
だから、可愛いね、って言ってもらえるのはすごくうれしいし、もっと褒められるように頑張ろう!って思える。

でも当時の私は、顔色悪かったし、眉毛はほぼ何もしていないし、二重は非対称だし、ヘアアイロン持っていなかったし、正直、可愛くなかったと思う。
何もしてないからくびれもないし、小顔マッサージなんていう言葉は私の辞書にはなかった。
だけど彼女は、“可愛い”って言ってくれた。
彼女には、愛想笑い、建前、お世辞、嘘、どれも全く似合わない。
だから彼女の言うことは正しいと思っていたし、そんな彼女の前では素直になれていた私だったけれど、激しく否定した。
それ、“私に向けられる言葉”一覧にないです、索引を駆使しても見つかりません。

あの子が可愛いって言ってくれたからきっと大丈夫。可能性を探し始めた

だけどあの子にメイクをしてもらってプリクラでものすごく盛れた時、そして彼女がSNSにあげてくれた時、私の中で何かが崩れ落ちた。
ああ、人付き合いにおいて、グループとか、ヒエラルキーとか、関係ないんだ。
他人を軸に自分のこと過小評価してきたけど、もしかしたら軸は私の中にあるのかもしれない。もしかしたら、私にも可能性は少しはあるのかな?
トレンドと自分に似合うものや好きなものが一致しないこともあるのかな?
自分軸に好きなものを選ぶ方が、自分カラーになって楽しいのかもしれない。
その方が、可愛いのかもしれない。
その日から、あの子みたいにトレンドに流されないで自分の好きなことをしはじめた。
“可愛い”を、私にかけられてもいい言葉という形で私の辞書の中に彼女が吹き込んでくれた。
雑誌に載っていなかったけど、好きな服を着て、好きなメイクをした。
あの子が可愛がってくれたから、きっと大丈夫。
大学も別で、ほぼ会えなかったけれど、彼女を思い出して就活でも自分の顔立ちと性格を隠さなかった。
自分の顔を強調するメイクをして、ありのままの私で社長面接に臨み、内定をいただいた。
彼女の言葉を思い出して、好きな人にもアプローチできた。
念願のカップルコーデディズニーも、住み込みのアルバイトも最高だったな。
そうしているうちに、自分に自信を持つことを学んだ。
自分の可能性を探し方を身に着けた。

高校生の在り方にも大学生にも社会人にも、正解はないはず

あの子みたいに、目立つグループにいながらも成績優秀な高校生もいる。
高校生の在り方に正解なんてなかった。
頭いいキャラじゃないけど、むしろ偏差値も評定平均も低いけど、難関校を目指した。
きっと、大学生の在り方にも正解はないはず。
だから、やりたいことは何でもやった。
だから、我ながら驚くような経験を積んだ濃い学生生活を謳歌できた。

ということは、社会人にも、そして人生にも正解はないはず。
今のところ一般企業で働いているけれど、いつかやってみたいこと、行ってみたいとこ、挑戦してみようかな。

私の目標と夢、タフだけどきっと達成できるはず。
一歩でも近づけるように、今日も明日も頑張ろう。
前例もいないし、どうしたらいいかわからないし、お金もすごくかかるけど、これからも私の可能性を探し続けよう。
コンプレックスじゃなくて、私の持っているものや性質に注目しよう。
きっと、楽しい!

あの子がいたから、こんなにも人生が楽しい。