「女性の生理や妊娠・出産と、男性の性欲を同列に並べて語るのはおかしい!」
という主張を、最近よく見かける。
確かにそれはそうだ。なぜならそれらは、全く別物だからだ(当たり前!)。
しかし、男性として生きたことのない私は、「異性の性欲」を本当の意味では理解できない。それだって、紛れもない事実なのである。
例えば。ただ1人の愛するパートナーを行為に誘った時、性別特有の事情を理由に断られたとしたら?その状況は私に、どんな感情を抱かせるのだろう。
というかそもそも。「性に関わる悩みをオープンに語るのはおかしい!」という風潮が、世の中にはある。だから私達は、性について語り慣れていないし、性の悩みを他人に相談したり、パートナーと話す機会を、暗黙のルールによって奪われている。
さて。私は早速、このルールを破ります。プライベートを開示する上で、旦那の許可も取りました。
私が今から語る悩みは、「なぜ今の私はあまり性欲がないのに、パートナーからの誘いにたまに応じているのだろうか」。皆様、ぜひお付き合いください。
パートナーというより、チームメイト。あまり「したい」と思えない
私は子どもを3人授かってきた。私にとって今の旦那は、パートナーというより、チームメイト。目指しているのは、恋愛小説ではなく、少年漫画の様な関係。気分は「麦わらの船長」だ。
そんな私のモットーは、「言うは数日間の擦り合わせ、言わぬは一生の後悔」。私達夫婦の間では時折、「擦り合わせ」の皮を被った「小競り合い」のような会話が交わされている。
しかし、そのやり取りを経て深まる「絆」無しに、5人クルーの船旅はできないというのが、キャプテン(私)の意向だ。私は母親として、持続可能な家族の形を構築したい。この船を、ひとまず10年、いや、20年。とにかく難破させまいと、日々奮闘しているのだ。
そんな「努力・友情・勝利」的な価値観が影響しているのだろう、私は今の旦那とは、あまり「したい」と思えないという訳だ。……ではここで、冒頭のテーマに戻る。
「なぜ今の私はあまり性欲がないのに、パートナーからの誘いにたまに応じているのだろうか」
「今自分がしたいと思う相手」が「自分としたくない」と思っていたら
結論から言うと、「この生活が永遠には続かないという自覚が、私にあるから」なのだと思う。
3人の子ども達は、いずれ船を降りる日がやってくる。そんな未来を想定して。その時隣にいる6つ歳上の旦那に、私から行為に誘ったとして。相手が「性欲が湧かない」ことを理由に、それに応じてくれないとしたら(年齢的に十分あり得る)。
……私はきっと悲しくなるだろう。
多分その悲しみは、「今自分がしたいと思う相手」が「今自分としたくないと思っている」という、寂しさだ。はぁ?ホルモンバランス?なんだよそれ。そんなことより今すぐに!私を抱き締めてくれ!!と、思うかもしれない。
……今の旦那も、きっとこんな悲しみを抱いている。そして私が今の旦那としたくないと思うのも、ホルモンバランスというヤツのせいなのである。
「女性の生理や妊娠・出産と、男性の性欲を同列に並べて語るのはおかしい!」
それはもちろんそうなのだけれど、私の性欲に関しては「生理や妊娠・出産」、そして「子育て」と大きく関係している。私が目下擦り合わせたいものは、両親としての価値観だ。性の価値観の擦り合わせは、ぶっちゃけ二の次でいい。だって夜は眠いし(本音)。
しかしそれと等しく同様に、数10年先の旦那の価値観やホルモンバランスがどうなるかは、現段階では本人ですらわからない。だから私は一旦、悲しい未来を想定して、現状に向き合いたい。
「今の私に性欲がない」、それはしかたがない。でもそれを押し付ける態度を、とり続けたいとは思わないのだ。
数10年先の私達夫婦の暮らしを見据えているから、誘いにたまに応じる
現在アラサーの、チームメイトとしての生活を積み重ねたその先に、アラフォー・アラフィフのパートナーの形が。そしてさらにその先には、おじいちゃん・おばあちゃんになったパートナーの形が作られていく。
だから私は旦那に誘われた時。そのタイミングで乗りやすい波が来ていたら、可能な範囲でそれに乗ることにしている。乗るか乗らないかは、その都度自分が決める。
私は行為をこなすことより、最終的にハグをしながら寝そべって、旦那と波の音を聴いて過ごしたい。今思っていることを話し合う時間を重視したい。
……ふぅ。ルールを破って文章にしてみて、やっと明確になった。今までは眠い目を擦りつつ旦那としていた行為(ひどい)に、私が本来どんな意味付けをしていたのかが。
私が旦那からの誘いにたまに応じる理由。それは旦那が可哀想とか、浮気防止のためとか、そういうことじゃない。「今」、性の価値観の擦り合わせを望む旦那に、「今」できる範囲で対応したいから。そして私が「数10年先」の私達夫婦の暮らしを見据えているから。
夫婦の時間というものは、過去から今、そして未来まで繋がっているものだと、私は強く感じている。
「させられている」のではなく、旦那と「したいからしている」のだ
もちろん私のこんな姿勢や態度が、必ずしも正しいと主張している訳ではない。客観的に見れば、「無理して応じている」様に捉えられるかもしれない。逆に「とはいえ、嫌じゃないんでしょ?」と思われるかもしれない。
ただ、私が大切だなと思うのは、私は旦那に「させられている」のではなく、旦那と「したいからしている」のだということ。私は主体的に、歩み寄っている。
そして私は、「女性の生理や妊娠、出産と子育て。そしてお互いの性欲についても、旦那と一緒に考えたい!」。アラフォー、アラフィフ、その先も。旦那と幸せな航海を続けたいと思う。
そんな気持ちを旦那にも知っておいて欲しいから、今夜も波打ち際で、話をしてみようかな。
最後に。
もしも私と同じように、「なぜ今の私はあまり性欲がないのに、パートナーからの誘いにたまに応じているのだろうか」という悩みを抱えている人に、この文章が届いたとしたら。
私がルールを破った甲斐も、あったというものだ。