いつもニコニコしてたあの子。どうせ「自分のことを嫌いな人なんて誰もいない」って思って生きているんだろう?

小6の時、同じクラスになったあの子は誰に対しても笑顔で接していた

話したこともない私に、「○組だったよね?よろしくね!」って笑いかけてきたのが小学6年生の春。冬になると、みんなが紺とか黒とか暗い色のベストを着る中で、赤いベストを着る子。年上の友達が多い。みんなとは違う。そんなイメージ。小学校生活最後で、初めて同じクラスになった。

……怖い。誰に対しても笑顔で、「よろしくね!」って言ってる……! 彼女は、周りの人達みんなと仲良くなっていった。クラス全員と言っても過言ではない。私もその1人である。

彼女は、天然だった。お道具箱にはカスタネットが入っていたし(4年から一度も使っていない)、冗談は全部本気だと思っているし(「宇宙人に昨日会ったよ」「うそ!呼んでよ!明日は私のところに来てくれますように!」と言っていた)、給食中に何度も牛乳噴くし(こんなことで?みたいなところでツボに入る)。

そんなこんなで、私のおふざけにも全部付き合ってくれた。だけど、唯一、付き合ってくれなかったことがある。それは、誰かの悪口である。「A子、ムカつく!」「B太、何あれ!」「C、ウザい!」と、鼻息荒く話す私に、同じグループの友達は「わかる~!」「ウザいよねぇ」と同調していた。当時の私は、それで安心していたのだ。みんな同じ気持ちなんだ。よかった。

私が悪口を言っている時、彼女だけ悲しい顔をしているのは…なぜ?

………? 彼女だけ悲しい顔をしている。どんな気持ちで聞いてるの? 何でそんな顔するの? 私のことどう見えてるの? 私の心がざわついた。悪いことしてるんだから、悪口言われて当たり前だと思っていた私は、素朴な疑問を彼女にぶつけた。「嫌いな人、いないの?」と。

返ってきた答えは、私にとって信じられないものだった。「いないよ!だってみんな絶対いいところあるじゃん!そりゃ間違えて人を傷つけることもあるだろうけどさ」と言った。私は、脳天から足先までを何かが貫いたかのような衝撃だった。階段を駆け上がる足が止まった。前に進めない。真っ直ぐこちらを見る彼女が、キラキラすぎて目を伏せた。「人のいいところを見つける人生の方が何倍も楽しいんよ!」と彼女は言った。

いかに自分がちっぽけだったのかを思い知った。この日のことは、今でも鮮明に覚えている。目の前が一気に開けたのだ。闇の中で、一つの光が見えたとはこのことだった。そこから私は変わった。

私は「負の気持ち」を相手に押しづけずに、関わり方を変えていった

マイペースだった子には「まだ?」から「一緒にやろう!」、否定ばっかりだった子には「文句ばっか言うな!」から「どんなことがしたい?」、自分のことしか考えなかった子には「うるせー!自己中!」から「みんなの意見聞いていいものに決めよう!」と、関わり方が変わったのだ。

すると不思議なことに、今まで苦手だとか嫌だとか思って関わりにくかった人達が、「みとさん!みとさん!」と突然フレンドリーになったのである。そして、私の心も格段に軽くなったのだ。私の負の気持ちを相手にずーっと押し付けていたんだなと知った。

あの子がいたから、私は暗黒の世界から抜け出せた。どんなことがあっても、「私の味方が周りにいる」と思うことができた。今度は私が恩返しをする番。将来有望な子どもたちに、あなたの言葉を伝えていくよ。