あの子と聞いて最初に思い出すのは、中学生のとき一番嫌いで、一番気になって、本当は憧れていた彼女のこと。
私と彼女の相性は最悪。初めて会ったときから気に食わなかった
彼女と私は中学校の同級生。同じ演劇部に所属していた。
顔が抜群に可愛くて、華があって、いつも自信満々。先輩に媚びずハッキリものを言うタイプの彼女が、初めて会ったときからなんとなく気に食わなかった。
かくいう私は、大人しくて地味なタイプ。しかし、嫌いな人には容赦なく噛み付く。
だから彼女が何か意見する度に「それは違くない?」と彼女の言うことに食って掛かった。(彼女が正しいことを言っていてもいちゃもんをつけていた。今考えれば理不尽極まりない。)
そんなこんなで私と彼女の相性は最悪。すれ違っても挨拶なんてしない。顔を合わせれば睨み合い。
でも帰る方向が一緒だったから、部活後はたとえ無言でも2人並んで帰ってた。
3年間、ずっとそんな調子は変わらなかったけど、一緒にいる時間は段々と増えていった。
部活が終わったあと、近所のマックで先輩達の愚痴を言い合った。夏休みの部活では、1時間早めに行って自主練した。目指してた高校の文化祭に行って演劇部の公演を一緒に観た。
バレンタインには部活に何か差し入れしよう、って話になって、アンタの家でホットケーキを焼いた。修学旅行の部屋が一緒で、他のルームメイトを驚かせよう、って言って2人で狭い所に隠れていたのに、いつまで経っても気づいてもらえなくて、次の集合に遅刻しそうになった。高校受験の直前にアンタの家で勉強会した。(あのときは2時間も遅刻してごめん。)
皆の前では絶対に仲の良い素振りは見せなかった私たちだけど、中学3年生になったときには同じ高校を受験して、受験会場に2人で一緒に行くくらいの仲になっていた。
でも。
私だけ高校受験に失敗した。
結果を伝えたときの彼女の申し訳なさそうな顔は今でも覚えてる。そこで彼女と私の繋がりは切れてしまった。
大好きだったのに、伝える方法がわからなかった。あのときはごめんね
ねぇ。あのときはごめんね。子供だった。
アンタのことが大好きだったのに、それを伝える方法がわからなかった。アンタに汚い言葉を吐いて、傷つけることしかしてなかった。アンタは私の暴言に慣れたフリをしていたけど、本当は傷ついていたかな。
それでも、アンタは3年間、ずっと私の隣にいてくれたね。ずっと憧れてたんだよ。悔しいけど。
まず、アンタは演技がめちゃくちゃ上手い。1年生で主役に選ばれても何の違和感もなかった。要領も良いし、友達も多い。かわいいし、勉強もできる。ずっと、アンタになりたかったよ。
久しぶりの再会。私たちの距離が離れてしまったことを実感した
大学に入って、彼女の連絡先を手に入れた。早速彼女に連絡。
「ご飯でも行かない?」
久しぶりに再会した彼女は「りなりちゃんからご飯に誘われる日が来るなんてね」と笑った。私からご飯誘ったらおかしいかよ。嫌味ったらしい所は変わってない。
私たちは他愛もない話を始めたけど、会話はあんまり盛り上がらなかった。
なんとなく、私たちの距離が離れてしまったことを実感した。
もう、私は彼女に追いつけないだろう。
いや、本当はもうずっと前に彼女のことを追いかけるのを辞めていたのかもな。
さよなら、あのときの私たち。
きっとアンタたちの夢見てた将来じゃないけど、なんとか頑張ってるよ。夢を見てくれて、そのときの自分たちを信じてくれて、ありがとう。
ふと最近始めたInstagramのストーリーに目をやると、彼女の「親しい友達」のみが見ることのできるストーリーが見られるようになっていた。
ああ、私、ちゃんと彼女の「親しい友達」なんだ。そう思って少しだけ泣きそうになった。