数多のルールの中で生きる私が一番破りたいルール、それはパーソナルジムの食事ルールである。

素敵な女性になるぞ!と意気込んだ私の前に現れた食事ルール

今年の春、人より脂肪を溜め込んでいる私の身体を、三十路までに人並みに少しでも近づきたい一心でパーソナルジムを申し込んだ。
今までに、痩身エステ、サーキットトレーニングなど大量の諭吉とともに汗水垂らして取り組んできた。
だが奮闘虚しく、立派に成長してきたこの身体を戻すことはなかったのである。

パーソナルジムで運動して、素敵な女性になるぞ!と意気込んだ私の前にあらわれたのは、食事ルールである。
A,B,C,Dの4種類に分けられた食材たちを、朝昼晩それぞれの時間帯に合わせてバランスよく食べるらしい。空腹時間できたらダメだとおやつにプロテイン飲むことも推奨された。

納豆や豆腐といった大豆製品も、キノコや海藻なども食べれる上におやつまで!!
私には希望が見えたような気がした。
「できそうな気がします!やってみます!」
意気揚々と答えた私の頭の中は、憧れの女性へと変身した自分の姿でいっぱいだった。

そんな希望も虚しく未だ体内に変化がないまま、現在入会10日目。
今朝のご飯、バナナ1本。お昼、野菜、マッシュルーム、サラダチキンが入ったサラダ(パン抜きにしてもらった)、ミネストローネ。

なんだこの、楽しみのない食事は……。
小鳥ですら、パンくずを啄むこのご時世に、小麦が入っていない。
世の中の痩せて綺麗な女性たちは皆、こんな涙ぐましい努力を続けていたのか、と頭が下がる思いである。

食事ルールのせいで、関係ない人が謝るハッピーじゃない状況…

お昼の注文は時間を潰すために入ったお気に入りのカフェで、サラダに入っているパンを抜いて欲しいとオーダーしたら、店員さんから「お客様、失礼ですがアレルギーか何かでしょうか」と心配されてしまった。

いやいや、私はカリカリに焼いたパンが入ったここのサラダ大好きなんです、ここのパスタも大好きなんです、と声を大にして言いたいところ「いえ、アレルギーじゃないので大丈夫です。お手数おかけしてすみません」と謝る。
私の答えを聞いた店員さんは厨房に戻り「アレルギーじゃないそうです!すみません、聞き取り忘れてました」と謝っていた。

好きな食事にありつけず、そんな私の食事のせいで関係ない人が謝っている状況……全然ハッピーじゃないじゃないか。
それもこれも、あの食事ルールが悪いんだ!!
こんなルールあるからいけないんだ!!

なんという責任転嫁。
自分で望んで入ったジムなのに、いい迷惑である。

過去のルールで今がある。決意を胸に今日も私は食事をとる

そもそもこんな状況を産んだのは、過去の自分が実施していた「普段頑張ったから今日だけご褒美」ルールである。
今日だけ、がeveryday……つまり毎日行うとそりゃ溜まるってものだ。

過去は変えられない。だが、教訓を生かすことはできる。
同じ間違いは繰り返さないし、これ以上諭吉を無駄にできない。栄一貯めても脂肪は無駄遣いできるよう、効率の良い身体を作り上げるぞ。
その決意を胸に、今日も私は食事をとる。