「最後まで怒らせてごめんね」。共依存関係だった彼との恋の末路
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「なんであいつと付き合ったの?」
付き合っていた当時よく質問された。
自分でもよくわからない。
ただ全く自慢できる彼氏ではなく、当時の私は彼氏の話題になることを避けようと必死だった。
振り返ってみれば好きだった記憶もあまりない。
思い返せば、辛く苦しい記憶ばかり。
出会いは大学のサークルだった。
好意を抱かれたのは薄々気づいていた。
事あるごとに私を呼びつけ、まるで自分の女のように話す彼が少し苦手だった。
ある日、お酒を飲み暴れる彼を私がなだめる役に任命された。
私が話しかけると、怒鳴り散らしてた彼がウソのようにおとなしくなった。
その日から彼のいわゆる“お世話係”になんとなくなってしまった。
周りから見たら適任だったのだろう。とんだ迷惑だ。
周りに流されるがまま付き合った。
処女に夢を見なくなっていたこともあり、あっさりと初めてもゆだねた。
ただ体を重ねるのは気持ち良いとは思わなかった。
「気持ちいいだろ」
乱暴に抱かれている自分を、まるで映画を見ているような気分で見ていた。
自分の感情は見てみぬふり、私がこの人のためにいないといけない。
けれど逃げたい、もう嫌だ。
たばこの残り香と甘い香水の香りがどろどろに混ざり合いべっとりと鼻の奥にこびりつく。
まるで逃げられない私みたいだ。
「私たち、合わないんだと思う」
一度逃げたことがある。
別れ話をしたとたん彼は激高し、その後泣いた。
深夜の住宅街で怒鳴り散らされ、大泣きされて、こっちが泣きたいわ。
でも私が支えないと。この人を理解してあげてるのは私しかいないから。
いつしかそう思うようになった。
彼はかわいそうな子で、理解者がいないから。
私が支えないといけないから。
「お前は俺の一番の理解者だよ」
鎖のように言葉ががんじがらめに私の心を捕らえる。
誰かに必要とされている、誰かに特別だと思われている。
なのになんでこんなに息苦しいんだろう。
次第に何も思わなくなった。
彼の発する言葉、行動、全てが疎ましく思う自分の心に蓋をした。
怒らせないように、泣かせないように、周りに迷惑をかけないよう。
だって私しか理解してあげられないから。
彼はそんな私へより重い愛を向けた。
束縛が激しくなり、他の子と出かけるだけで怒鳴られた。
手こそあげられなかったが言葉の暴力を浴びせられた。
顔を合わせれば喧嘩が絶えなかった。
なんで私は付き合ってるんだろう。
なんでこんな辛いんだろう。
なんで別れられないんだろう。
「俺ら共依存だからね」
ある日彼が言った。
「お互い自立しないといけないのに共依存だよね、この関係」
彼と私を繋ぎとめていた”何か”がぷつんと切れた。
私がいないといけない、私が支えないといけない。
妄信かのように自分を縛り付けていた言葉がふと軽くなる。
私は依存なんてしたくない。
もっと自由に生きたい。
途端に彼が醜い何かに感じた。
怒られたときに「どうしよう」ではなく「はやく終わらせたい」と感じた。
泣いているとき「かわいそう」ではなく「距離を置きたい」と感じた。
恋人にしか聞かせない甘い声に、「気持ち悪い」と思ってしまった。
これ以上偽りの仮面で付き合っていくのは無理だった。
「ごめん、もう別れてください」
まだ好きな時の記憶があれば、心惹かれるあなたの姿があれば、一緒に手を取って頑張れたかもしれない。
あなたのわがままを聞いてあげなくてごめん。
最後まで怒らせて、泣かせてごめん。
あなたの第一理解者になれなくてごめん。
ごめんね、でも私今の方がずっと自由で楽しいの。
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