「あの子」と私は、高校の3年間を同じクラスで過ごした。

学校行事で意気投合し、いつも明るい彼女と一緒に帰るようになった

 彼女はいつも明るくて男女どちらとも仲が良い。人への関心が少ない私とは正反対。だから1年生の時はほとんど喋ったことがなかったし、何もなかった。

 でも1年生の最後、3か月だけ仲が良くなった。学校行事の中でたまたま意気投合して、一緒のバスで帰るようになって、学校が休みの日にわざわざ待ち合わせてプリクラをとった。カラオケに行って、一緒に流行りのロックバンドの歌をうたって、下手すぎて大笑いしたこともあった。

 いろいろな話をした。クラスのこと、今までどんな生活を送ってきたか、将来は何をしたいか。過去現在未来すべてを共有した。お互い学校で見せない暗い部分を、さらけ出してしまったこともあった。お互いそれまで仲良くしていた子がいたのに、それより2人でいる時間が長くなっていたかもしれない。

私は彼女に嫉妬していた。次第に一緒に帰ることが少なくなっていった

 2年生になると、私たちが仲の良いことは周りも知っていることとなった。
けれど、「いつメン」にはならなかった。2人でずっといるには正反対すぎたし、私にはずっと仲良くいられる自信もなかった。一緒に話すのは下校の時間。バスに乗る20分。その20分で十分だった。むしろ1年生の時の距離感がおかしかったとも思った。

 次第に、一緒に帰ることが少なくなっていった。それは私が悪かったと思う。帰り際いつも他の子と話している彼女に、一緒に帰ろうと声を掛けるのも、その輪の中に入るのも、何となく自分の性に合わない気がした。引け目を感じていたのかもしれない。

 いや、むしろ私にはないものを持っている彼女に、私は嫉妬していた。私たちは時々話す、そして時々一緒に帰る仲になった。

 3年生になると、一緒に帰ることもなくなった。私が何かと理由をつけて、一緒に帰るのを拒んだからだ。彼女はすぐに一緒に帰る友達をみつけ、私も他の友達と帰るようになった。時々バスが一緒になると気まずかった。私の方だけかもしれないけど。

卒業してすぐ、2人で夢の国へ行った。会ったのはそれが最後になった

 卒業してすぐに、2人で夢の国へ行った。いつ約束をしたのかも、どちらから誘ったのかも覚えていない。ただ、私たちが会ったのはそれが最後になった。

 彼女は、よく私に「卒業してからも、なんだかんだいって会うんだろうなあ」と言っていた。私もそうだと思った。なんだかんだ彼女と話すのは楽しかったし、彼女の考え方にもはっとさせられることがあったからだ。

 だけど、私はそれを否定し続けた。そうだね、と肯定する方が楽だし、正解だと思う。それでも、それに頷いてしまうのはなぜか悔しい気がしたのだ。

 私は彼女に「ツンデレ」だと言われたことがあった。それを守ろうとしたかったのかもしれない。もし卒業して会わなくなったとしても、彼女の中の私が、私であってほしかった。彼女がいたから、私は嫉妬するほど人に関心を持つことができたのだから。

 卒業して、もうすぐ2年経つ。彼女は元気にやっているだろうか。

 私はいろいろあった。大学で仲の良い友だちもできたし、彼女とは別の仲が良かった子とも疎遠になってしまった。

 だけど「あの子」と聞いて真っ先に私が思い出した人は、あなただったと言ったら、彼女は笑ってくれるだろうか。