大学で知り合った周りの友人らにこの質問をすると、どうも私の価値観はおかしいらしい。
地元の友達からは、割と共感されたことなんだけどな。
「え、みんな筆箱1個も盗まれたことないの」

私の地元は貧困地域。小学生の時、数え切れないほど文房具を盗まれた

私の地元は、どうやら貧困地域なようだ。
そうはいっても本人らに自覚はない。だってみんな奨学金を借りるから、それが当たり前だもん。みんな18歳になると「大人として責任を持て」なんて言われて、大学生なのに社会に放り投げられちゃって、バイトばっかしてなきゃ生きていけないのが普通だもん。

数字で見ると、地元の世帯収入は平均376万円ほどらしい。
おじい、おばあばっかの街ならわかる。しかし、実態は県で二番目に人口が多く、若い世帯だらけ。少子化のご時世で、子供が多すぎて小学校を新しく作っちゃう町だ。え、376万って。夫婦二人の総計だとして、どうやって子供育てながら生きてくんだ。

そういえば、私は一人の女の子から文房具を何回も盗まれたことがある。よく集団で上履きや体操着を盗まれたなんていじめのドラマを見たことがあるが、私の経験はおそらくいじめとはまた違う気がする。

小学生の時の話だ。親に消しカスを集めるローラーの付いた消しゴムを買って貰った。授業中にコロコロと消しカスを集める時、流行の最先端をいく自分に酔いしれた。

それは、休み時間だった。一人の同級生に「筆箱の中身見せて」と言われ、能天気な私は筆箱を渡し、そのままトイレに向かった。トイレから戻り、筆箱を開けるとお気に入りの消しゴムがなくなっている。

あいつだ。

そう確信し、次の日、すかさず先生に言いつけた。先生はその子を呼び、事実確認をすると突然泣き出し、従兄弟から貰ったのだという。結局未解決のままでいた。

しかし、数日後その子のお道具箱の中からぽろっと私の消しゴムが出てきてしまった。
小学生の間、結局私は筆箱を総計3個丸ごと、細々とした文房具を数え切れないほど盗まれた。

「お金がかかるから国立大に行きなさい」。生徒の人生狭めてない?

その子の家は、近所でも有名なゴミ屋敷だった。今考えると、その子の服は毎日ヨレヨレで、いわゆるネグレクトであったのではないかと思う。

小学生にとって、文房具は勉強する上での最大の武器だ。その武器を私は散々その子に取り上げられたし、その子も自分の生活でたった100円の消しゴムも鉛筆も買ってもらえなかったのかと今になって思い返すと胸が痛い。

こんな事実を思い出せば、貧困地域であることに納得。19年間その場で生きてきて気付けないのって、まあまあ怖い。いや、かなり恐怖。

思えば、私の高校では、「私立大学」断固拒否みたいな風潮があった。ちなみに地域で偏差値が一番高い進学校。

しかし、授業は完全国公立進学向け。先生に何度も「地元の国公立も行けるのになんでお金のかかる私立?学費2倍だよ?理数が苦手なら理数受験がないところもあるよ」なんて進路変更を迫られたことだってある。高3の秋学期ですら、文系私大志望の私に1日2コマの数学の授業があった。授業中に机の下に英単語帳を隠しながら必死で覚えているのが見つかって、よく先生に頭を叩かれたものだった。

結局、学年の大方が同じ国立大学に進学したし、先生たちは某Sランク私大に合格した生徒よりも地方国立大に合格した生徒を褒め称えた。(そして校門前にどでかく国公立大○○○名進学と横断幕を貼った)

決して地方国立大を卑下したいわけではないけれど、先生が「お金がかかるから国立大に行きなさい」なんて言うの、生徒の人生狭めてない?

教育にお金をかけて。人生の選択肢が誰にでも自由であるように

私がルールを変えるのなら、貧困同調圧力を撤廃する、と言うか、させない豊かな町にする。18歳でもう大人の仲間入りなんて言わせない。そんな風潮この町から消してやる。

教育にお金をズブズブ使っちゃいたくなるルールを作ろう。勉強したい子にクラウドファンディングできちゃったり、未来のこの町へみんなでたくさん先行投資を促すそんなルール。

今の日本は、大学まで面倒見てくれなきゃ、なかなか他国に経済面で太刀打ちできない。お願いだから将来に繋がる学びを自由に受けさせてくれ。大学卒業して、一人前になったらたくさん稼いでいくらでも還元するからさ。

人生の選択肢が誰にでも自由なものであってほしい。お金を理由に限られた選択肢の中から選ぶなんてもうこりごり。そのためにはまず、自分たちが貧困である事実を認めなきゃいけない。認めて、抜け出すための最善の方法、教育の質をもっとそれぞれに適したものにしなきゃいけないと思うんだ。

教育にたくさんお金をかけて、狭い世界に囚われることのない価値ある人材がまた町に戻ってきた時、私の地元はきっと今より素敵な自慢の町になるんじゃないかと思う。