『無理せんごつ、身体には気をつけて』で、私と父のLINEは父のこのメッセージで必ずと言っていいほど終わる。
絵文字、顔文字、『!』も『?』ももちろんスタンプの使用も全くない。これはちょっとした業務連絡なのでは?と考えたこともあるが、そうじゃないみたいだ。

熊本弁混じりで、かつ『体』ではなく『身体』なのだ。
きっと私の肉体的、精神面を意味する内面的との両方で大事にしてくれという意味だと勝手に捉えている。幼少期からそこまで体が強くなかったので、じゃっかん心配性の父らしさが出ているという感じだ。

2週間に1度、2往復未満で終わるメールの送り主はいつも父だった

高校進学を機に私が親元を離れ生活しているので、かれこれ考えてみれば10年近く一緒に住んでいないのかもしれない。
高校1年の時にはじめてガラケーを持たせてもらって、当時は父もガラケーで、2週間に1度くらいの頻度でメールでのやり取りをしていた。内容としては本当に端的で多くても2往復未満のやり取りで終わっていた。

今日は父が母とどこどこに行ったとか、桜が見頃になったとか珍しく雪が積もっただとかだ。たまに、「調子はどがんね?」と私がたくさん選択肢を用意出来るような開かれた質問をしてくる。

いつも送ってくれるのは9割方、父からだった。それはお互いスマホになってLINEを利用していても変わらない。写真がより手軽に送れるようになったので、愛護センターから引き取ってきたふくさん(ネコの名前)の写真ををよく送ってくれる。私の日々の疲れた身体に優しく浸透していくような感覚である。

父との記憶は2往復未満のメッセージ。これこそ私の中の父だった

スマホに変えたのも、ふくさんと暮らすようになったのも、少なからずとも熊本地震の影響だろうかとふと思う。やたらと躍動感がふくさんにはあるのか、スマホで撮る瞬間にまだ慣れずにブレてしまうのか、たまにふくさんの送られてくる写真は効果音をつけるならば『ブンッッッ』ってくらいはっきりしない写真もあった。

まだ不慣れだが写真には収めておきたい、LINEで送りたいという想いがあったのだろう。
そんな事を考えていたら、ついつい頬が緩んでしまう。いけない、ここは電車の中だぞ、公共の場だぞ、表情筋をもっと強ばらせるんだ!と思ったがこのご時世私も含め多くがマスクをしているので大丈夫かと再び頬が緩む。

改めて、今回のテーマを読み返す。『実は父に伝えたいこと』。
今書き連ねた事は父に伝えたいことというよりは、父に対しての私の独り言だとこの時点でハッとなった。
しかしもう遅い。テーマを見た時に直感を頼りに指が入力していたからだ。
きっとみんなは幼少期の父と私、仕事と父、父に今謝りたいことなどなど、とてもはっきりしているに違いない。

ただ、私はこれでいいのだ。『父』に関してなら間違いなく私の中で、LINEのやり取り『無理せんごつ、身体には気をつけて』が私の中で占める割合が高く、これこそ父なのだから。

帰省できず会えていない父へ。身体には気を付けて、無理せんごつね

コロナで一年以上帰省出来てない。今までは、夏と冬と年に2回は帰省していた。父と母が住んでいる地域が高齢者が多く小さな町なので、なかなか安易には帰れない。かと言って、父は『帰ってこないで』とは1度も言わなかった。

たぶん、はっきりと言いたいけどなかなかストレートに言えないのだろう。正直私も何度も何度も帰りたかったが、このお互い我慢してきた一年以上の時間を帰省する事によって一瞬で壊すかもしれないと自分に言い聞かせる日々が続く。

父へ、私は神奈川でなんとかやってます。
展覧会の話、お城の発掘調査のバイトの話。直接会って話したいことが次から次へと出てきます。
まだその日は遠そうだけど、暖かくはなってきましたが朝晩の気温差は大きいです。
身体には気をつけて、無理せんごつね。